東京で一人暮らしをするなら、家賃はできるだけ安い方がいい。
……とは思うものの、そもそも東京都内で一番家賃が安い駅はどこなのだろう。
逆に「ここに住むだけで毎月とんでもない金額が飛んでいく」という、一番高い駅も気になる。
なんとなく、安いのは足立区や江戸川区、高いのは港区や千代田区あたりというイメージはある。
では実際に数字で比べると、どれくらい違うのか。
2026年の最新データを調べてみると、同じ東京23区でもかなり極端な差が出ていた。
先に注意しておきたいのが、「家賃が一番安い駅」には複数の答えがあること。月額家賃で比べるのか、1㎡あたりで比べるのか、ワンルームだけを見るのかで順位は変わる。今回はこの違いも含めて見ていく。
まず結論。23区で「安い駅」と「高い駅」はここ

CHINTAIが2026年8月に発表した東京23区の調査では、1㎡あたりの平均家賃が最も安かったのは葛西臨海公園駅。
逆に最も高かったのは竹芝駅だった。
| 順位 | 家賃が安い駅 | 1㎡あたり | 家賃が高い駅 | 1㎡あたり |
|---|---|---|---|---|
| 1位 | 葛西臨海公園 | 2,410円 | 竹芝 | 7,095円 |
| 2位 | 見沼代親水公園 | 2,637円 | 六本木一丁目 | 7,078円 |
| 3位 | 喜多見 | 2,714円 | 神谷町 | 6,784円 |
葛西臨海公園と竹芝では、1㎡あたりの平均家賃に約2.9倍もの差がある。
これを単身者の最低居住面積水準である25㎡に単純換算すると、その差は月約11万7,000円。
年間では約140万5,000円になる。

140万円あったら、もはや「ちょっと家賃が違う」で済む金額じゃない。
ところが「毎月いくら払うか」で見ると答えが変わる
ここが少し面白いところ。
SUUMOがワンルーム・1K・1DKの一人暮らし向け物件を調べた2026年のランキングでは、23区で最も家賃相場が安かったのは京成本線の江戸川駅。
| 順位 | 駅 | 所在地 | 家賃相場 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 江戸川 | 江戸川区 | 6.9万円 |
| 2位 | 上井草 | 杉並区 | 7.0万円 |
| 3位 | 堀切菖蒲園 | 葛飾区 | 7.15万円 |
| 4位 | 梅島 | 足立区 | 7.2万円 |
| 4位 | 京成小岩 | 江戸川区 | 7.2万円 |
| 4位 | 篠崎 | 江戸川区 | 7.2万円 |
| 4位 | 竹ノ塚 | 足立区 | 7.2万円 |
| 4位 | 高野 | 足立区 | 7.2万円 |
| 4位 | 江北 | 足立区 | 7.2万円 |
| 10位 | 一之江 | 江戸川区 | 7.23万円 |
こちらは駅徒歩15分以内、築35年以内、10㎡以上40㎡未満の単身向け賃貸を対象に、管理費を含めた月額賃料の中央値を出したもの。
つまり2026年の調査では、「広さに対して安い駅」は葛西臨海公園、「一人暮らしで毎月払う家賃が安い駅」は江戸川ということになる。
ネット上の「東京で一番家賃が安い駅ランキング」で答えがバラバラになるのは、間違っているからではなく、そもそも比べている条件が違う場合が多い。
家賃が安い駅にはかなりハッキリした共通点がある


ランキングを眺めていて目につくのが、23区の外側にある駅の多さだ。
SUUMOの安い駅TOP20では、足立区の駅が9駅、江戸川区が6駅。さらに杉並区、葛飾区、練馬区が続く。
CHINTAIの1㎡単価ランキングでも、上位10駅のうち5駅が足立区の日暮里・舎人ライナー沿線だった。
「東京の端に行けば行くほど絶対に安い」という単純な話ではないものの、都心から一定の距離がある住宅地ほど家賃を抑えやすい傾向はかなり明確。
理由その1 都心の一等地ほど土地代を家賃に乗せなくていい
まず分かりやすいのが立地。
六本木、虎ノ門、竹芝、永田町のような都心部は、住宅だけでなくオフィス、ホテル、商業施設など、土地を使いたい側が非常に多い。
当然、その場所に住宅を建てて貸す場合にも高い賃料を取らなければ成立しにくい。
反対に、都心から離れた住宅地では土地の価格や需要が相対的に落ち着くため、その差が家賃にも表れやすい。
理由その2 便利さの種類が違う
安い街が不便とは限らない。
ただし、その「便利」の方向性が都心とは違う。
住宅街ではスーパー、ドラッグストア、コンビニ、ファミレスといった日常生活向けの店が中心。
都心部ではそこに加えて、オフィス、百貨店、高級ホテル、大型商業施設、劇場、有名店などが集まる。
つまり高い家賃には部屋そのものだけではなく、「玄関を出た先に何があるか」まで含まれているとも考えられる。
理由その3 小さな駅は意外と狙い目
江戸川、堀切菖蒲園、高野、江北など、安い駅ランキングには巨大ターミナルではない駅がかなり多い。
一方で、少し離れた駅で乗り換えれば都心には出られる。
「駅前だけですべてを済ませたい」という人には物足りないが、毎日の買い物ができて電車にも乗れれば十分という人にとっては、こうした駅が穴場になりやすい。
家賃が安いエリアに住むメリット
- 毎月の固定費を大きく減らせる
- 同じ家賃なら広い部屋を選びやすい
- バス・トイレ別、独立洗面台など条件を増やしやすい
- 駅徒歩や築年数で妥協しなくて済む場合がある
- 住宅街中心なので夜が比較的静かな場所も多い
- 川、公園、緑地などが身近な地域も多い
例えば家賃が月3万円違えば年間36万円。
5万円違えば60万円。
旅行に使うもよし、趣味に使うもよし、貯金に回すもよし。
特に在宅時間が長い人なら、駅前の華やかさより部屋の広さを取るという考え方はかなり合理的だ。
もちろん安いなりのデメリットもある
家賃が月3万円安くなっても、毎日片道30分ずつ通勤時間が増えれば、往復で1時間。
月20日勤務なら20時間、年間240時間にもなる。
もちろん電車内で本を読んだり動画を見たりできるが、「家賃だけ安ければ正解」というわけではない。
- 勤務地によっては通勤時間が長くなる
- 乗り換えが増える駅もある
- 終電後のタクシー料金が高くなりやすい
- 駅前の飲食店や商業施設が少ない場所もある
- 築古物件が多いことで相場が下がっている地域もある
- 河川に近い地域では水害リスクの確認が必要
特に江戸川区は、荒川・江戸川と東京湾に囲まれ、区の陸域の約7割がゼロメートル地帯。
これは「江戸川区は住んではいけない」という話ではない。
むしろ物件を決める前にハザードマップまで見るという、東京の東側で家を探す際の重要なチェック項目になる。
月額家賃最安の「江戸川駅」はどんな街?


SUUMOの単身向け家賃で23区最安だった江戸川駅は、京成本線の駅。
名前の通り駅のすぐ東側を江戸川が流れ、川を渡ればもう千葉県市川市だ。
高架下にはスーパーとドラッグストアがあり、周辺にはコンビニもある。
一方、駅前に巨大ショッピングモールや大規模繁華街が広がっているわけではない。
少し歩けば江戸川河川敷や小岩菖蒲園。
東京の中心部というより、「東京の端にある静かな住宅街」という表現がよく似合う。
京成本線で青砥方面へ出れば日暮里などへ向かうことができるので、完全な陸の孤島でもない。
華やかな駅前はいらない。家に帰ったら静かに暮らしたい。
そういう人には、家賃の安さが単なる我慢ではなくメリットになりやすい街だ。
1㎡単価最安の「葛西臨海公園」は意外と特殊
一方、CHINTAI調査で1㎡あたり最安だった葛西臨海公園駅は、「家賃が安い街」と聞いて想像する景色とは少し違う。
駅の南側には巨大な葛西臨海公園、その先には東京湾。
葛西臨海水族園や大観覧車もあり、東京23区とは思えないほど空が広い。
しかもJR京葉線なので東京駅へ直通。
「都心からものすごく離れているから安い」という単純な立地でもない。
ただし駅周辺は、住宅だけでなく公園や流通施設などが広がる独特の土地利用。
駅を出れば飲食店やスーパーが何十軒も並んでいるような街とは違う。



東京駅に出やすくて、海と巨大公園があって、それでも㎡単価は最安。これはなかなか面白い。
「便利さ=店の数」と考える人には合わないかもしれないが、自然の近さや開放感を重視する人にはかなり変わった選択肢になる。
では家賃が高い街は何にお金を払っているのか


高い駅ランキングを見ると、こちらは安い駅以上に分かりやすい。
上位10駅のうち、竹芝、六本木一丁目、神谷町、虎ノ門ヒルズ、外苑前、白金台の6駅が港区。
ほかには半蔵門、永田町、新宿西口、明治神宮前。
要するに、ほぼ東京の中心そのもの。
高い家賃で買っているのは、豪華な部屋だけではなく「東京の中心にいる」という立地そのもの。
通勤時間をお金で短くできる
都心勤務の人にとって最も分かりやすいメリット。
会社まで徒歩、自転車、地下鉄数駅という生活ができれば、片道1時間の通勤そのものがなくなる。
1日2時間、年間240日働けば480時間。
時間に換算すると20日分だ。
高い家賃を払って「時間を買う」という考え方には、こうして見るとそれなりの理由がある。
徒歩圏内だけで生活の選択肢が多い
飲食店、病院、ホテル、商業施設、劇場、カフェ、スーパー。
都心部では生活圏の中にさまざまな施設が集まっている。
電車に乗って買い物へ行く必要が減り、「今日はどこへ行こう」と選べる店の数そのものが多い。
この選択肢の多さも家賃の一部と考えれば、単純に「部屋が同じ広さなのに3倍近い」とだけ見るのとは少し印象が変わる。
家賃最高の「竹芝」はどんな街?
「東京で家賃が高い場所」と聞いて、竹芝を真っ先に思い浮かべる人は少ないかもしれない。
六本木、麻布、広尾あたりなら分かる。でも竹芝?となる。
実際の竹芝は、昔ながらの高級住宅街というより東京湾沿いに再開発された職住近接型のウォーターフロント。
東京ポートシティ竹芝には40階建てのオフィスタワーと18階建てのレジデンスタワーがあり、浜松町駅方面とは約500mの歩行者デッキでつながっている。
近くのウォーターズ竹芝にはアトレ竹芝、ホテル、劇団四季の劇場、船着場や水辺の広場まである。
ゆりかもめ竹芝駅だけでなくJR浜松町駅も徒歩圏。
新橋、東京、品川方面へも動きやすい。
住宅街の中に商店があるというより、仕事・住居・商業・文化施設をまとめて新しく作った街という方が近い。
家賃が高い理由が、街を歩くだけでも比較的分かりやすいタイプのエリアだ。
高いエリアのメリットとデメリット
- 都心勤務なら通勤時間を大きく減らせる
- 複数路線を利用しやすい
- 外食・買い物・娯楽の選択肢が多い
- 深夜まで営業する店も見つけやすい
- 再開発地区では街そのものが新しく整備されている
- 仕事と私生活を狭い範囲で完結しやすい
- 家賃そのものが高い
- 敷金・礼金など初期費用も大きくなりやすい
- 同じ予算では部屋が狭くなりやすい
- 繁華街やオフィス街では人通りが多い
- タワーマンションなどでは管理費なども高くなりやすい
- 湾岸部は地域ごとの災害リスク確認も必要
同じ「家賃10万円」でも東京では住める部屋がまるで違う
ここまで駅ランキングを見てきたが、実際の部屋探しでは「どこが1位か」よりこちらの方が重要かもしれない。
例えば予算を月10万円と決める。
家賃が安い地域なら、1Kから少し広めの部屋、駅徒歩の短さ、築浅、独立洗面台など、条件を上げられる可能性がある。
一方、都心の高額エリアで10万円に収めようとすれば、部屋を狭くする、築年数を広げる、駅から離れるなど、何かを削る必要が出てきやすい。
逆に「部屋は寝るだけでいい。会社まで徒歩10分の方が大事」という人なら、それでも都心を選ぶ意味はある。
結局、家賃相場は「その街が高いか安いか」だけではなく、同じ予算で広さ・築年数・駅距離・通勤時間のどれを取れるかを見ると分かりやすい。
「家賃が安い=治安が悪い」は本当?
家賃の安い街を調べると、かなりの確率で一緒に検索されるのが「治安」。
ただ、家賃の安さと治安をそのままイコールで結ぶことはできない。
家賃は都心までの距離、利用路線、駅の規模、築年数、物件供給量、土地利用など、さまざまな条件で決まる。
今回上位に入った江戸川駅や上井草駅が安いからといって、それだけを理由に「危険な街」と判断する根拠にはならない。
治安が気になるなら、家賃ランキングとは切り離し、警視庁の犯罪発生情報や、実際に夜の駅周辺を歩いた時の雰囲気を見る方がいい。
むしろ部屋探しでは、「治安」という大きなくくりだけでなく、駅から自宅までの道が明るいか、人通りがあるか、繁華街を通るか、といった物件単位の確認の方が実用的。
23区を出れば、東京でもさらに安く住める
ここまでは主に23区の話。
では「東京都内」という条件だけ残して、多摩地域まで広げるとどうなるのか。
当然、さらに安い駅が出てくる。
2026年にSUUMOが「新宿駅まで30分以内」という条件で調べたところ、東京都内では稲城市の矢野口駅が6.3万円。
京王よみうりランド駅が6.35万円、西国分寺駅が6.6万円、花小金井駅が6.65万円、西武柳沢駅と田無駅が6.8万円だった。
| 駅 | 所在地 | 家賃相場 | 新宿まで |
|---|---|---|---|
| 矢野口 | 稲城市 | 6.3万円 | 約30分 |
| 京王よみうりランド | 稲城市 | 6.35万円 | 約30分 |
| 西国分寺 | 国分寺市 | 6.6万円 | 約30分 |
| 花小金井 | 小平市 | 6.65万円 | 約29分 |
| 田無 | 西東京市 | 6.8万円 | 約26分 |
ここで面白いのが、23区最安の江戸川駅が6.9万円なのに、23区外まで広げれば新宿30分圏でも6万円台前半が出てくること。
住所に「東京23区」と書けることに価値を感じるか、新宿まで30分なら東京都市部でも構わないか。
この条件をひとつ外すだけでも、部屋探しの選択肢はかなり変わる。
安い街と高い街、暮らしを並べるとこんなに違う
| 比較 | 家賃が安いエリア | 家賃が高いエリア |
|---|---|---|
| 代表的な地域 | 江戸川・足立・葛飾など23区外周部 | 港・千代田など都心部 |
| 街の景色 | 住宅、スーパー、商店、川、公園 | 高層ビル、オフィス、複合施設、ホテル |
| 同じ予算なら | 広さや設備を確保しやすい | 狭さや築年数で妥協しやすい |
| 通勤 | 勤務先によって長くなる | 都心勤務なら短くしやすい |
| 買い物 | 日常生活向けの店が中心 | 選択肢が多い |
| 夜の雰囲気 | 住宅街では静かな場所が多い | 人通りの多い場所も多い |
| 強み | 広さと固定費 | 時間と立地 |
| 弱み | 移動時間 | 住居費 |
こうして並べると、「家賃が安い街」と「家賃が高い街」は単純な上下関係ではないことが分かる。
安い街ではお金の代わりに移動時間を使い、高い街ではお金を使って移動時間を減らす。
かなり乱暴にまとめれば、東京の家賃差はそんな構造になっている。
家賃相場が安い街でも「安すぎる物件」はちょっと待った
家賃が安いエリアを選べば住居費はかなり抑えられる。ただし、同じ地域の似たような物件と比べて明らかに安い部屋を見つけた時は、少しだけ慎重になった方がいい。
築年数が古い、駅から遠い、1階、日当たりが悪い、線路や大通りに近いなど、「なぜ安いのか」が分かる物件なら判断もしやすい。
逆に、条件を見る限り特に悪くないのに周辺相場より妙に安い場合は、建物の管理状態や騒音なども確認しておきたい。
家賃が安いからといって「変な住人が多い」と決めつけることはできない。ただ、壁が薄い、管理が行き届いていない、入退去が多いといった物件では、生活音や住民同士のトラブルが気になりやすくなることもある。
内見では部屋の中だけでなく、共用廊下、郵便受け、掲示板、駐輪場、ゴミ置き場あたりも見ておくと、その建物が普段どんな状態なのか意外と分かる。
安い物件の探し方や、「この安さは大丈夫?」と判断するためのチェックポイントについては、別記事で詳しく掘り下げます。
結局「一番安い駅」に住むのが一番お得なのか
必ずしもそうではない。
葛西臨海公園が㎡単価で最安でも、勤務地が新宿ならもっと便利な駅がある。
江戸川駅が単身向け家賃で最安でも、毎日渋谷へ通うなら通勤時間との比較が必要になる。
逆に在宅勤務が多く、休日も家で過ごす人なら、都心に住むためだけに毎月数万円を追加する意味は薄くなる。
部屋探しで本当に比べたいのは、単純な家賃ランキングではなく、
- 毎月いくら払うか
- 何㎡の部屋に住めるか
- 職場まで何分かかるか
- 駅から何分歩くか
- 周辺で生活が完結するか
- 自分が家でどれだけ時間を過ごすか
このあたりをまとめて考えた時の「自分にとっての安さ」なのだと思う。
東京23区だけでも、葛西臨海公園と竹芝では1㎡あたり約2.9倍。
そして23区という条件を外せば、新宿30分圏にも6万円台前半の街がある。
東京の家賃は高い。
でも「東京は全部高い」と一括りにするには、街ごとの差があまりにも大きい。


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