ヨークマートとヨークベニマル、イトーヨーカドーの“パチモン”みたいだけど何者?そっくり3スーパーの関係を調べてみた

スーパーの前を通ったとき、ふと気になることがある。

ヨークマート、ヨークベニマル、イトーヨーカドー。

名前は似ているし、ロゴを見ればどことなく同じ「ハト一族」の雰囲気。初見だと「イトーヨーカドーのパチモンみたいな店……?」と思ってしまっても無理はない。

ところが調べてみると、パチモンどころか、本当にかなり近い親戚だった。

ただし、ヨークマートとヨークベニマルでは生まれ方がまったく違う。そして2025年には会社関係まで大きく変わっている。

ざっくり言えば、ヨークマートは「イトーヨーカ堂が自分で作った食品スーパー」、ヨークベニマルは「福島のスーパーがイトーヨーカ堂と手を組んで仲間になった会社」。現在はイトーヨーカドーとヨークベニマルが、どちらもヨーク・ホールディングスのグループに入っている。

目次

結論:似ているのは偶然ではなく、ちゃんと身内だった

名前正体現在の運営
イトーヨーカドー総合スーパーを中心とする店舗ブランド株式会社イトーヨーカ堂
ヨークマート食品スーパーの店舗ブランド株式会社イトーヨーカ堂
ヨークベニマル東北・北関東などを中心に展開する食品スーパー株式会社ヨークベニマル

ここでいちばん紛らわしいのが、現在のヨークマート。

今のヨークマートは「株式会社ヨークマート」という別会社が運営しているわけではない。現在はイトーヨーカドーと同じ株式会社イトーヨーカ堂が運営している。

名前だけ見るとヨークマートとヨークベニマルが兄弟っぽいのに、会社で見るとちょっと違うのね。

まずはイトーヨーカドー。ここが話の大元

話のスタート地点はイトーヨーカドー。

ルーツは1920年、東京・浅草で開業した「羊華堂洋品店」。その後、1958年に株式会社ヨーカ堂が設立され、1965年に伊藤ヨーカ堂、1971年にイトーヨーカ堂へと社名を変更していった。

1972年には、現在まで続くおなじみのハトを使ったデザインが登場している。イトーヨーカドーの公式100周年ページによると、ロゴの白は「誠実」、青は「清潔」、赤は「情熱」を表している。

ちなみに会社名は「株式会社イトーヨーカ堂」、お店の名前は「イトーヨーカドー」。会社は最後が「堂」、店舗ブランドは「ドー」なので、ここも地味にややこしい。

ヨークマートは、イトーヨーカ堂が100%出資して作ったスーパー

ではヨークマートはどこから出てきたのか。

旧ヨークの公式沿革によると、株式会社ヨークマートは1975年12月にイトーヨーカ堂100%出資で設立されている。

翌1976年には千葉県八千代市に1号店の勝田台店をオープン。つまりヨークマートは、最初からイトーヨーカドーと無関係なスーパーだったわけではない。

生まれた瞬間からイトーヨーカ堂の身内。

その後、2020年には会社名を「株式会社ヨーク」へ変更。ヨークマートだけでなく、ヨークフーズやヨークプライスなど複数の食品スーパー業態を展開する会社になった。

ところが2023年9月、今度はその株式会社ヨーク自体が株式会社イトーヨーカ堂へ吸収合併された。

セブン&アイ・ホールディングスの公式発表でも、イトーヨーカ堂を存続会社、ヨークを消滅会社とする吸収合併が完了したことが発表されている。

ただし店舗名まで消えたわけではない。現在も「ヨークマート」「ヨークフーズ」「ヨークプライス」「コンフォートマーケット」といった名前は残っている。

現在のヨークマートは、会社として見るとイトーヨーカドーと同じ「株式会社イトーヨーカ堂」の店舗ブランドのひとつ。

ヨークフーズにヨークプライス……「ヨーク○○」ってほかにもいっぱいある

ヨークマートとヨークベニマルだけでも十分ややこしいのだが、スーパーの名前を眺めているとさらに出てくる。

ヨークフーズ、ヨークプライス、コンフォートマーケット、ヨークフーズ with ザ・ガーデン自由が丘……。

ちょっと待って。「ヨーク」一族、思ったより多くない?

実はこれ、適当に似た名前を付けて店舗を増やしたわけではない。

2020年にセブン&アイの首都圏食品スーパーをまとめて再編した結果、現在の複数ブランド体制ができた。

名前ざっくり何者?ルーツ・特徴
ヨークマート昔から続く食品スーパー1975年にイトーヨーカ堂100%出資で会社を設立
ヨークフーズ食品スーパー旧イトーヨーカドー「食品館」を中心に2020年から屋号変更
ヨークプライスディスカウント系食品スーパー旧イトーヨーカドー「ザ・プライス」を2020年に屋号変更
コンフォートマーケット食品スーパーの別業態フォーキャストがテスト展開していた店舗を2020年の再編でヨークへ統合
ヨークフーズ with ザ・ガーデン自由が丘ヨークフーズの派生型ザ・ガーデン自由が丘を運営するシェルガーデンと連携し、高付加価値商品を強化
ヨークマート フードセントラルヨークマートの店舗名バリエーション現在もモラージュ菖蒲店、ララガーデン川口店などで名称が使われている
ヨークベニマル別会社が運営する食品スーパー福島の「紅丸」をルーツに持ち、1973年にイトーヨーカ堂と提携

この中でヨークベニマルだけは成り立ちがかなり違う。ヨークマート、ヨークフーズ、ヨークプライス、コンフォートマーケットは現在イトーヨーカ堂側の店舗ブランドだが、ヨークベニマルは「株式会社ヨークベニマル」という別会社が運営している。

ヨークフーズは、もともと「イトーヨーカドー食品館」だった店が多い

まずヨークフーズ。

2020年、セブン&アイは首都圏の食品スーパー事業を再編。イトーヨーカ堂が展開していた「イトーヨーカドー食品館」のうち14店舗が、「ヨークフーズ」へ屋号変更された。

つまりヨークフーズは、まったくの新規チェーンとして突然生まれたというより、既存のイトーヨーカドー食品館をヨークブランドへ組み替えて誕生した面が大きい。

この再編については、セブン&アイ・ホールディングスの2020年の公式発表でも確認できる。

ヨークプライスは「ザ・プライス」の後継

名前からして安そうなヨークプライスも、ルーツをたどるとイトーヨーカドー。

以前イトーヨーカ堂が展開していたディスカウント業態「ザ・プライス」の5店舗が、2020年の再編時に「ヨークプライス」へ変更された。

そのため「ヨークマートの廉価版としてゼロから作られた」というより、ザ・プライスの流れをヨークブランドへ移したものと考える方が分かりやすい。

コンフォートマーケットだけ名前に「ヨーク」が付いていない

さらにややこしいのが「コンフォートマーケット」。

名前だけ見ればヨーク一族とは思えないが、これも現在イトーヨーカ堂側でヨークマートやヨークフーズなどと一緒に案内されている食品スーパー。

もともとはセブン&アイ傘下の株式会社フォーキャストがテスト展開していた業態で、2020年の食品スーパー再編時に株式会社ヨークへ統合された。

現在のイトーヨーカドー・ヨーク公式アプリでも、「ヨークマート・ヨークフーズ・ヨークプライス・コンフォートマーケット」の4ブランドがまとめて案内されている。

さらに「ヨークフーズ with ザ・ガーデン自由が丘」まである

そして名前の長さで一気にラスボス感が出てくるのが、「ヨークフーズ with ザ・ガーデン自由が丘」

これはヨークフーズに、高品質食品スーパー「ザ・ガーデン自由が丘」の要素を組み合わせた店舗。

セブン&アイの資料では、ザ・ガーデン自由が丘を運営するシェルガーデンと連携し、高付加価値商品の品揃えを充実させた店舗として説明されている。

2026年現在も、小豆沢店、新宿富久店、中野店、西落合店、東逗子店などで、この長い店名が実際に使われている。

「ヨークマート フードセントラル」という名前も残っている

さらに店舗一覧を見ていると、普通のヨークマートに混じって「ヨークマート フードセントラル」という名前も出てくる。

2026年現在、イトーヨーカ堂の公式案内では「ヨークマート フードセントラル モラージュ菖蒲店」「ヨークマートフードセントラル ララガーデン川口店」などが確認できる。

つまり細かい店舗名まで追いかけ始めると、「ヨークマート」だけでもさらに派生名があるということになる。

結局、「ヨーク○○」はどう覚えればいい?

全部の歴史を覚える必要はない。

ヨークマート=昔からの食品スーパー。ヨークフーズ=旧食品館系。ヨークプライス=旧ザ・プライス系。コンフォートマーケット=別ルーツから統合された食品スーパー。そしてヨークベニマルだけは福島生まれの別会社――くらいに整理するとかなり分かりやすい。

店名だけを見ると、誰が誰だか分からないヨーク一族。

でも歴史をたどると、イトーヨーカドー周辺にあった複数の食品スーパーを統合・再編してきた結果、似た名前が大量に残っているというわけだ。


ヨークベニマルは「福島のスーパー」がイトーヨーカ堂と手を組んだ会社

一方、ヨークベニマルはヨークマートとは生まれ方がまったく違う。

ヨークベニマルの公式沿革によると、始まりは1947年に設立された「株式会社紅丸商店」。翌1948年から福島県郡山市で事業を始めている。

つまり、もともとはイトーヨーカドーとは別に育った福島のスーパーだった。

大きな転機となったのが1973年。

紅丸商事はイトーヨーカ堂と業務提携し、その年に社名を「株式会社ヨークベニマル」へ変更した。

ヨークベニマルは「イトーヨーカドーが作った別ブランド」ではなく、もともと存在した紅丸がイトーヨーカ堂と組んで生まれた会社。

ここがヨークマートとの最大の違いになる。

その後ヨークベニマルは成長を続け、2006年にはセブン&アイ・ホールディングスの完全子会社となった。

同じ「ヨーク」でも、マートは生まれた時から身内。ベニマルは途中から仲間になった。これなら少し分かる。

そもそも「ヨーク」って何?英国のヨークとは関係あるの?

ここまで来ると、もうひとつ気になる。

なぜ「ヨーク」なのか。

イトーヨーカドーの惣菜ブランド「YORK DELI」の公式資料には、かなり分かりやすい説明がある。

そこでは「YORK」について、イトーヨーカドーが初めて衣料品のプライベートブランドを発売した際のブランド名だったと説明されている。

さらに現在では、イトーヨーカドー、ヨークマート、ヨークフーズなどを連想させる言葉としても使われている。

詳しくはイトーヨーカ堂の「YORK DELI」ブランドコンセプト資料でも確認できる。

つまり「ヨーク」は、突然どこかから持ってきた名前ではなく、イトーヨーカドーの歴史の中で昔から使われてきたブランドワードだったわけだ。

ハトのマークまで似ているのはなぜ?

名前だけでなく、さらに「パチモン感」を強くしているのがロゴ。

イトーヨーカドーといえば、赤・青・白を使ったハトのマーク。

ヨークマートやヨークベニマルにも、緑や赤を使ったよく似たハトのデザインが使われてきた。

しかし、ここまでの歴史を知れば理由は簡単。

似せた偽物なのではなく、そもそもイトーヨーカドーとの関係を持つ同じ系譜のマーク。

むしろ関係を知らずにロゴだけ見るから「妙に似ている」と感じるわけで、関係を知ってから見るとかなり素直なデザインに見えてくる。

そして2025年、関係がまた変わった

ここまででも十分ややこしいのだが、2025年にもう一段階変化があった。

セブン&アイ・ホールディングスはスーパーや専門店などの事業を「ヨーク・ホールディングス」へまとめ、その後ベインキャピタルを中心とする新たな資本体制へ移行した。

2025年9月1日に事業承継が完了し、イトーヨーカ堂やヨークベニマルなどは現在のヨーク・ホールディングス傘下に入っている。

2025年の再編時点で発表された株式保有割合は、ベインキャピタル60.00%、セブン&アイ・ホールディングス35.07%、創業家4.93%。

セブン&アイ側でも現在、ヨーク・ホールディングスは完全子会社ではなく「持分法適用関連会社」として掲載されている。

現在の関係をかなり単純化すると、こんな形になる。

ヨーク・ホールディングスイトーヨーカ堂、ヨークベニマルなどを傘下に持つ
株式会社イトーヨーカ堂イトーヨーカドー、ヨークマート、ヨークフーズなどを運営
株式会社ヨークベニマルヨークベニマルを運営する別会社
セブン&アイヨーク・ホールディングスへ35.07%出資した関連会社という関係

現在のヨーク・ホールディングス公式サイトでも、イトーヨーカドーとヨークベニマルが同じグループ企業として並んでいる

そのため「イトーヨーカドーもヨークベニマルも今もセブン&アイの完全子会社」と説明すると、2026年現在は正確ではない。セブン&アイとの関係自体は残っているが、2025年9月の再編で企業関係は変わっている。

まとめ:そっくりなのには、ちゃんと理由があった

ヨークマートやヨークベニマルを初めて見て、「なんだかイトーヨーカドーの偽物っぽい」と思ってしまうのは、ある意味かなり正しい感覚だったのかもしれない。

名前も似ている。ハトのマークも似ている。扱っている商品にも共通点がある。

でも、それは真似したからではない。

ヨークマートはイトーヨーカ堂が作ったスーパーで、ヨークベニマルはイトーヨーカ堂と提携して同じ流れに入ったスーパー。

そして2026年現在は、イトーヨーカドーとヨークベニマルが再び「ヨーク・ホールディングス」という同じ屋根の下にいる。

知らずに見ると「似すぎ」。歴史を知ってから見ると「そりゃ似るわ」。スーパーの看板ひとつにも、意外と長い企業の歴史が詰まっていた。

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