人間、一度間違えて覚えた言葉はなかなか直らない。
「シュミレーション」「うる覚え」「サイゼリア」あたりなら、間違えている人を見ても「あー、あるある」で済む。
ところが世の中には、「汚職事件」を「お食事券」だと思っていたとか、ニュース番組の「レインボー発」を「レインボ一発」だと思っていたとか、本人の頭の中で別の世界が完成しているタイプも存在する。
そしてさらに下へ行くと、ADHDとADSLを混同するような、「いや、それはさすがに遠いだろ」という領域に突入する。
今回はそんな「ずっと勘違いして覚えていた言葉」を、かなりありがちなものから、だんだん怪しくなる順に集めてみた。
この記事には、広く見られる定番の言い間違いだけでなく、SNSやネット上で語られてきた個人的な聞き間違い・昔からあるネタも含めている。後ろへ行くほど「みんなが間違える」というより「そんな間違い方する人いるのか」寄りになる。
まずは普通に間違えている人が多そうなやつ

まずは、指摘されれば納得できるレベルから。
特にカタカナ語は、聞いた音をそのまま覚えているうちに一文字入れ替わったり、濁ったりしやすい。
| 間違えて覚えがち | 正しくは | ひとこと |
|---|---|---|
| シュミレーション | シミュレーション | simulation。国立国語研究所がわざわざ解説するほど実際に多い。 |
| コミニュケーション | コミュニケーション | 「ミュ」と「ニュ」が入れ替わる。 |
| うる覚え | うろ覚え | 言葉そのものをうろ覚えしているという悲しい状態。 |
| ふいんき | ふんいき | 漢字にすると「雰囲気」なので分かりやすい。 |
| アボガド | アボカド | 濁るのは「ド」だけ。 |
| サイゼリア | サイゼリヤ | 最後は「ア」ではなく「ヤ」。 |
| バーモンドカレー | バーモントカレー | 最後は濁らない。 |
| フューチャリング | フィーチャリング | featuring。futureではない。 |
| バック | バッグ | カバンならbagなので「バッグ」。 |
| ベット | ベッド | 寝る方はbed。 |
| ティーパック/ティーバック | ティーバッグ | 紅茶の袋はtea bag。 |
このあたりは「間違っていた」と言われても、まだショックは小さい。
「シュミレーション」は本当にかなり多い
正しいのはシミュレーション。
国立国語研究所の「ことば研究館」にも、「シュミレーション」という発音や表記に接することは少なくないとして、音の順番が入れ替わる現象そのものが解説されている。
単なる一人の言い間違いではなく、大勢が同じ方向へ間違える言葉ということらしい。
サイゼリヤは「サイゼリア警察」まで生まれた
正式名はもちろんサイゼリヤ。
ところが「サイゼリア」と書く人があまりにも多く、かつてXには間違えた投稿へ「いいね」を付けて回る「サイゼリヤ警察」まで登場した。
2020年に「#ずっと間違えて覚えてたこと選手権」が流行した際にも、「サイゼリアだと思っていた」という投稿が多数出ている。
バーモントカレーも最後は「ト」
ハウス食品の正式名称は「バーモントカレー」。
「バーモンド」と濁って覚えていた人も、先ほどのハッシュタグでかなり見つかった。
商品名を何十年も知っているのに、最後の一文字だけ別物。こういうのは指摘されるまでまず気づかない。
子どもの頃ならかなり分かる「耳だけで覚えた言葉」

大人は漢字を知っているので「そんな間違いする?」と思うが、子どもは基本的に耳から入ってきた音だけで判断する。
知らない単語が出てくれば、知っている単語に勝手に変換。それでも本人の中で話が通れば、そのまま何年も保存される。
| 本当の言葉 | こう聞こえた | 脳内で起きていたこと |
|---|---|---|
| 台風一過 | 台風一家 | お父さん台風とお母さん台風がいそう。 |
| 波浪警報 | ハロー警報 | 何に注意すればいいのかまったく分からない。 |
| 汚職事件 | お食事券 | 政治家がお食事券をもらったらニュースになるのか? …場合によってはなるかも。 |
| 東名高速 | 透明高速 | 道路が見えない近未来仕様。 |
| 高速道路 | 光速道路 | 速すぎる。 |
| 埼京線 | 最強線 | 首都圏最強の電車。 ただしネットの暗部では隠語として使われていた過去も。 |
| 選手宣誓 | 選手先生 | 「宣誓」という単語を知らなければ先生に聞こえる。 |
| 全線不通 | 全線普通 | むしろ普通に走っていそう。 |
| 月極 | げっきょく | しかも全国展開の駐車場会社だと思う人まで。 |
| アメダス | 雨だす | 雨を測るから「雨だす」。説得力だけはある。 |
| 加齢臭 | カレー臭 | カレーを食べた後の話だと思ってしまう。 |
| 人間ドック | 人間ドッグ | dogではなく、船を点検するdockが由来。 |
| 房総半島 | 暴走半島 | だいぶ治安の悪い千葉県になる。 |
「汚職事件=お食事券」は昭和からのあるある
「おしょくじけん」という音だけ聞けば、子どもが「お食事券」と変換するのはかなり自然。
2019年にはTOKYO FMの番組に、ニュースで聞く「汚職事件」を最近まで「お食事券」だと思い、政治家は食事券がもらえていいなと思っていたという10代の体験談まで寄せられている。
さらにテレビ朝日のドラマ『ヒモメン』でも、この「汚職事件/お食事券」の聞き間違いがそのまま物語のネタとして使われた。
ここまで何度も使われると、もう聞き間違い界の古典である。
月極駐車場は「月極」という巨大企業ではない
「月極」の読みはつきぎめ。
ところが子どもの頃に「げっきょく」と読んでしまい、さらにどこの街にも「月極駐車場」があるため、「月極という会社が日本中で駐車場を経営している」と思っていたというネタまで存在する。
この勘違いはネット上であまりに定着し、架空企業を装った「月極グループ」というサイトまで作られた。
アメダス=「雨だす」は気象庁まで知っている
これはかなり出来がいい。
雨を観測する設備だから「雨だす」=アメダス。
ところが実際は、Automated Meteorological Data Acquisition Systemから作られた名称。
しかも福岡管区気象台の「はれるんマガジン」が、わざわざ「アメダスは雨を測るから『雨だす』?」という題名で解説している。

公式側まで把握してる勘違いは強い。
歌とテレビは「間違ったまま何十年」が起きやすい


歌詞や番組名は、わざわざ文字で確認しない。
その結果、子どもの頃に作った脳内歌詞を、大人になるまで一度も訂正する機会がないことがある。
「レインボー発」→「レインボ一発」
かつてフジテレビで放送されていたニュース番組『FNNレインボー発』。
正しくは「レインボー・はつ」だが、文字だけ見ると「ー」と漢数字の「一」がつながり、「レインボいっぱつ」にも見える。
そしてこれは作り話ではなく、長瀬智也が『新堂本兄弟』出演時、「最近まで勘違いしていたこと」として『レインボー発』を『レインボ、一発』だと思っていたと答えたエピソードが残っている。
番組タイトルとして考えると「レインボ一発」の方が勢いはある。
「小槍の上で」→「小ヤギの上で」
『アルプス一万尺』の有名な聞き間違い。
正しくは「小槍(こやり)」。槍ヶ岳山頂付近にある岩峰のこと。
ところが「アルプス」「こやり」と聞けば、小さなヤギを連想してもおかしくない。
2026年には『アルプスの少女ハイジ』公式X自身が、巨大な子ヤギの上で踊っているイメージをイラスト化。「こういう感じで覚えている人が多そう」と投稿して大きな反響を集めた。
・・・・。
童謡にはまだまだある
| 正しくは | 勘違い | どうしてこうなった |
|---|---|---|
| うさぎ追いし | うさぎ美味し | 『故郷』。食の歌に変わる。 |
| どんぶりこ | どんぐりこ | 『どんぐりころころ』。どんぐりに引っ張られる。 |
| 雪やこんこ | 雪やこんこん | 「こんこんと雪が降る」が自然すぎる。 |
| 異人さんに | ひいじいさんに/いいじいさんに | 『赤い靴』。急に親族が迎えに来る。 |
| 我が師の恩 | 和菓子の恩 | 『仰げば尊し』。卒業式で和菓子へ感謝。 |
「ルパン・ザ・サード」→「ルパンルパーン」
これもかなり有名。
『ルパン三世』で聞こえる英語の「ルパン・ザ・サード」を、子どもの頃ずっと「ルパンルパーン」だと思っていたというもの。
「third=三世」という知識がない子どもからすれば、意味の分からない英語を聞き取るより「ルパン」を二回言っていると処理した方が早い。
「思い込んだら」→「重いコンダラ」
『巨人の星』主題歌の「思い込んだら」を「重いコンダラ」と聞き取り、グラウンドをならす整地ローラーの名前が「コンダラ」だと思っていたという有名なネタ。
この話が広まりすぎた結果、整地ローラーを本当に「コンダラ」と呼ぶ俗称まで生まれた。
さらに「その歌詞が流れる場面で主人公がローラーを引いていたから間違えた」という説明もセットで語られがちだが、実際のオープニングはそうなっていない。
聞き間違いに、聞き間違えた理由まで後付けされた例。
「今日は楽しい」→「今日は魂」
比較的新しい実例では、2022年にXへ投稿された『サザエさん』の聞き間違いが強い。
5歳の娘さんが「今日は楽しい」を「今日は魂」だと思い、「今日は魂ってどういうこと?」と母親に質問。
母親は「サザエさんは闘魂込めてバイキング行きません」とツッコんだのだが、今度は母親自身が「ハイキング」を「バイキング」と書き間違えていた。
親子合作で元の歌からかなり遠くまで来ている。
6Pチーズは「ロクピー」ではなく「ロッピー」
耳ではなく、文字を見ても間違える例。
雪印メグミルクの「6Pチーズ」は、正式には「ロッピーチーズ」と読む。
2020年には6Pチーズ公式が「#ずっと間違えて覚えてたこと選手権」に参加し、改めて「ロッピー」だと投稿。
パッケージにも昔から読み方が書かれていたのに、「ロクピー」派が大量にいた。
ネットでは「聞き間違いそのもの」を使ったコピペまで流行った


こうした「同じ音なのに意味がまったく違う」という構造は、昔のネットでも格好のネタになった。
有名な「ポイントカードはお餅でしょうか」のコピペ
2009年ごろに広まった有名なコピペが、店員の「ポイントカードはお持ちでしょうか」を、客が「ポイントカードはお餅でしょうか」と受け取ってしまうもの。
店員「当店のポイントカードはお餅でしょうか」
ぼく「えっ」
店員「当店のポイントカードはお餅ですか」
ぼく「いえしりません」
店員「えっ」
ぼく「えっ」
店員「まだお餅になってないということでしょうか」
ぼく「えっ」
店員「えっ」
ぼく「変化するってことですか」
店員「なにがですか」
ぼく「カードが」
店員「ああ使い続けていただければランクがあがってカードが変わりますよ」
ぼく「そうなんだすごい」
店員「ではお作りいたしましょうか無料ですよ」
ぼく「くさったりしませんか」
店員「えっ」
ぼく「えっ」
店員「ああ期限のことなら最後に使ってから一年間使わないときれます」
ぼく「なにそれこわい」
店員「ちょくちょく来ていただければ無期限と同じですよ」
ぼく「なにそれもこわい」
店員「えっ」
ぼく「えっ」
店員はカードの話をしている。客は餅の話をしている。
なのに「カードは変化するのか」「期限が切れる」といった店員の説明が、ところどころ餅の話としても成立してしまい、会話だけが先へ進んでいく。
そして最後の「なにそれこわい」まで含めて定番化した。
2009年春にはすでに流行し、「規制中→寄生虫」など同じ形式の改変コピペも多数作られている。
本気で聞き間違えればただの勘違いだが、二人が別の意味を想像したまま会話を成立させると、そのままコピペの形式になる。
この手のネタが流行ったのも、みんな一度くらい「音だけ聞いて別の言葉に変換した経験」があるからかもしれない。
ここから「ねーよw」の割合が増えてくる


ここまでは「子どもの頃なら分かる」が多かった。
ここからは一人ひとりの脳内変換がかなり自由になってくる。
向井理 → 「ムカイ・リ」
俳優・向井理の名前を、「むかい おさむ」ではなく「ムカイ・リ」という外国人風の名前だと思っていたというもの。
2020年の「#ずっと間違えて覚えてたこと選手権」でも、この勘違いをしていたという投稿が紹介されている。
一度「ムカイ・リ」という区切り方を知ると、今度はそちらにしか見えない瞬間がある。
乳歯 → NEW歯
昔からネット上で語られている子どもの勘違いネタ。
「にゅうし」と聞いて、「NEW歯」=新しく生えた歯だと思う。
意味としてはむしろ永久歯の方がNEW歯に近い。
トラウマ → 虎馬
こちらもネットで昔から見かけるタイプ。
「トラウマ」を外国語だと知らず、「虎馬」という熟語だと思っていたというもの。
虎と馬に何をされたら、そんな言葉が生まれるのか。
September → ジステンパー
Septemberはもちろん9月。
ジステンパーは動物の感染症名。
意味もジャンルも一切つながっていないが、音だけ抜き出すと「セプテンバー/ジステンパー」で一部が似ている。
昔の個人サイトや近年の回想でも、「セプテンバー」を「ジステンパー」に替えて歌っていたという話が残っている。
ここまで来ると「間違えて覚えた」というより、頭の中で片方がもう片方を呼び出してしまうタイプ。
そしてADHDとADSL
最後はこれ。
ADHDとADSL。
ADHDは注意欠如・多動症を指す言葉。一方のADSLは、かつて広く利用された通信方式「Asymmetric Digital Subscriber Line」。
医療用語とインターネット回線なので、意味として共通する部分はない。
似ているところを探せば、AとDが入った英字4文字というくらい。



さすがにこれはADSL側も困る。
間違いなのに、本人の中ではちゃんと意味が通っている
39個並べてみると、単なる覚え間違いだけではないことが分かる。
「シュミレーション」のように口に出しやすい形へ音が移動するもの。
「台風一家」「お食事券」「透明高速」のように、知らない言葉を自分が知っている言葉へ置き換えるもの。
「小ヤギ」「ルパンルパーン」のように、歌を耳だけで覚えた結果そのまま定着するもの。
そして「ADHDとADSL」のように、形が少し似ているだけの別物が同じ引き出しへ入ってしまうもの。
特に子どもの頃の勘違いは、意味を知らないなりに本人が説明まで作ってしまう。
月極が全国チェーンでも、台風が家族でも、透明な高速道路があっても、「世の中にはそういうものがあるんだ」で処理できてしまう。
怖いのは、今も自分の中に一つくらい残っていそうなこと。
誰にも指摘されなければ、本人にとってはずっと正解のままである。


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