トウモロコシを食べた翌日、便の中に黄色い粒を見つけたことはないだろうか。
どう見ても昨日食べたトウモロコシである。
そこで、ふと気になった。
もし1か月間、トウモロコシだけを食べ続けたら便はどうなってしまうのか。
黄色い粒の割合が日に日に増えていき、最終的にはトウモロコシの皮ばかりになるのか。それとも見た目は意外と普通のままなのか。
実際にそんなことを試した人間まで含めて調べてみた。
そもそもトウモロコシはなぜ便の中にそのまま出てくる?

まず前提として、トウモロコシの粒が丸ごと消化されずに出てきているわけではない。
Cleveland Clinicによると、消化されにくいのは主に粒を覆っている外側の皮。この部分にはセルロースが多く含まれている。
人間はセルロースを効率よく分解できないため、外皮は元の形をかなり保ったまま消化管を通過することがある。
しかし、その内側にあるデンプン質などは普通に消化されている。
便の中で見えている「トウモロコシ一粒」は、食べた粒が丸ごと帰ってきたものではない。主に消化されにくい外皮が残ったものだ。
よく噛むほど外皮が細かく壊れるため、便の中でも粒の形が目立ちにくくなる。
参考:Cleveland Clinic「Why Can You See Corn in Poop?」
トウモロコシだけで1か月、栄養的にはどうなる?

文部科学省の食品成分データベースによると、茹でたスイートコーン100gには次のような栄養が含まれている。
| 成分 | 100gあたり | 約2.1kg食べた場合 |
|---|---|---|
| エネルギー | 95kcal | 約2,000kcal |
| たんぱく質 | 3.5g | 約73.5g |
| 脂質 | 1.7g | 約35.7g |
| 炭水化物 | 18.6g | 約390.6g |
| 食物繊維 | 3.1g | 約65.1g |
| カルシウム | 5mg | 約105mg |
| ビタミンD | 0μg | 0μg |
| ビタミンB12 | 0μg | 0μg |
出典:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」。約2.1kg欄は100gあたりの数値から単純計算した参考値。
単純計算では、1日2,000kcalをトウモロコシだけで取ろうとすると可食部だけで約2.1kg必要になる。

毎日2kg超え。便の話以前に、食卓が完全にトウモロコシ祭りになる。
カロリーとたんぱく質の「数字」だけなら意外と取れる。しかし栄養のバランスは別問題。
トウモロコシのたんぱく質は一般にリジンやトリプトファンが少なく、ビタミンB12やビタミンDも期待できない。
また、トウモロコシを主食とする地域では歴史的にナイアシン欠乏によるペラグラが問題となった。中南米では石灰などのアルカリで処理する「ニシュタマリゼーション」によって、ナイアシンの利用性などを改善してきた食文化もある。
「1か月で必ず栄養失調になる」「必ずペラグラになる」とは断定できない。ただし、トウモロコシだけで長期間生活する食事は明らかに栄養が偏るため、実際に試すようなものではない。
参考:FAO「Maize in human nutrition」、Merck Manual「Niacin Deficiency」
そもそも便は「食べ物の残り」だけではない
ここが今回の疑問を考えるうえで重要な部分。
トウモロコシだけを食べ続けても、便が100%トウモロコシになることはない。
NCBI Bookshelfの解説では、人間の便はおよそ75%が水。残る固形分には未消化の食物だけでなく、細菌、脂質、無機物、たんぱく質、消化管から剥がれ落ちた細胞などが含まれている。
便に含まれる細菌の割合もかなり大きい。研究レビューでは、細菌由来のバイオマスが便の乾燥固形分の25~54%を占めるとされている。
つまり、食卓からトウモロコシ以外を完全に消したところで、腸内細菌や腸壁由来の物質まで消えるわけではない。



便って思っていた以上に「食べ残し以外のもの」でできている。
さらにトウモロコシ由来の食物繊維が大量に入ると、便そのものの量が増える可能性もある。
過去のヒト試験では、コーンブランを摂取すると便量や排便回数が増えた例が報告されている。もちろんコーンブランと大量のスイートコーンは同じものではないため、そのまま数字を当てはめることはできない。ただ「消化されにくいトウモロコシ由来繊維が便量を増やす」という方向性は確認されている。
参考:NCBI Bookshelf「Physiology, Defecation」、Roseら「The Characterization of Feces and Urine」、PubMed掲載のコーンブラン摂取試験
では実際にトウモロコシだけを食べた人はいないのか?


ここまで仕組みを調べたところで、本題。
こんなくだらない疑問を自分の体で試した人はいないのか?
探してみたところ……
いた。
削除されたYouTube動画「WillyTheComposer」の実験
2016年にImgurへ投稿されたGIFには、スイートコーンだけを食べ続けた男性の映像が残されている。
投稿には元動画としてYouTubeチャンネル「WillyTheComposer」の動画が示されているが、現在そのYouTube動画は削除されている。
さらに2023年、Redditの「昔見た動画を探す」コミュニティに、この動画を探している人物が現れた。
その人物の記憶では、男性はトウモロコシだけを食べ、途中から「よく噛む場合」と「あまり噛まない場合」を試していたという。
そして最後に便器を映した場面について、投稿者は「缶詰のコーンをそのまま空けたように見えた」と説明している。
別のユーザーが「YouTube版は削除されたがFacebookに転載されている」と動画を発見すると、質問者は「Solved!」と回答。探していた映像と一致したことを認めている。
ただし実験期間については、2016年のImgur投稿では「2日間」、2023年のReddit投稿者の記憶では「1週間以上」と食い違っている。元動画を現在確認できないため、正確な日数は断定できない。
それでも「トウモロコシだけを食べて便がどうなるか試した人物と動画が存在した」こと自体は、複数の痕跡から確認できる。
出典:Imgur「Guy eats nothing but sweet corn for two days and poops out nothing but perfect corn!」、Reddit r/tipofmytongue「Man only eats only corn to see what it does to his poop」
2020年にも「100%トウモロコシ便」を目指した人がいた
さらに2020年、別のRedditユーザーがもっと直接的な実験をしている。
目的はズバリ、便を100%トウモロコシにできるのか試すこと。
本人は約36時間トウモロコシだけを食べる計画を立て、実際に挑戦した。
しかし結果は本人の目測で、最初の排便が「約40%トウモロコシ」、次が「約30%トウモロコシ」。途中で空腹と腹痛も出て、家族に知られて実験は中止となった。
もちろんこれは研究機関による実験ではなく、あくまでネット上の個人による体験談。40%という数字も測定値ではなく本人の見た目による推定なので、科学的データとして扱うことはできない。
ただし「トウモロコシだけを食べれば便そのものがトウモロコシになる」という単純な結果にはならなかった点は、便の成分について分かっている医学的な知識とも矛盾しない。
出典:Redditユーザー frosterz22「i’m going to try to make my shit 100% corn」「conclusion to the corn experiment」
結局、1か月続けたら便はどうなる?
今回調べた範囲では、「1か月間、本当にトウモロコシだけを食べ続け、便を記録した」という信頼できる実験は見つからなかった。
ただし、消化の仕組み、便の成分、食物繊維の研究、実際に短期間試した人の記録を合わせると、おおよその答えは出せる。
1か月トウモロコシだけを食べ続けても「トウモロコシの皮だけの便」にはならない。ただし、普段より便量が増え、その中に黄色い外皮が大量に混ざった状態になる可能性は高い。あまり噛まずに食べれば、見た目はかなり「コーンだらけ」に近づくと考えられる。
健康な成人を対象とした研究では、食べ物が消化管全体を通過する時間は平均すると1日強程度。ただし個人差はかなり大きい。
そのため、トウモロコシだけの生活を始めて数日もすれば、それ以前に食べていた料理の影響はかなり減っていく。
逆に言えば、そこから30日まで続けても「日に日に純度が上がって最後はトウモロコシ100%」になるわけではない。
便には毎日、腸内細菌、消化管由来の細胞、水分、胆汁由来の物質などが加わるからだ。
見た目として最もありそうなのは、普通の便をベースに、大量の黄色いトウモロコシの外皮が混ざっている状態。
「便器いっぱいに缶詰のコーンをぶちまけたように見えた」という昔の動画の話も、外皮が大量に残る仕組みを考えればまったくあり得ない話ではない。



結論。トウモロコシ100%にはならない。でも見た目だけなら、かなりトウモロコシ寄りにはできるらしい。
もっとも、その状態を見るためだけに1か月も栄養の偏った食生活を続ける価値があるかと言われれば、さすがにない。
人類はすでに、そこまでして確かめなくてもいいところまで答えに近づいていた。


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