ネットで校則の話題が出ると、かなりの確率で見かける言葉がある。
「そんな校則が嫌なら、別の高校へ行けばよかったじゃん」
たしかに、入学する前からその校則を知っていたなら話は分かる。
でも、それなら逆に気になる。
中学生は高校を受験する前に、その学校の校則をどこまで知ることができるのか。
髪型、服装、スマホ、アルバイト、登下校、学校生活の細かい決まり。入学してから「実はこれ禁止です」と言われるものまで、受験前に確認できるようになっているのだろうか。
そこで今回は、首都圏の公立高校の公開状況を調べたうえで、東京都内の私立高校12校にも実際に問い合わせてみた。
先に結果を書くと、公立高校はかなり校則を確認しやすい。一方、私立高校は学校によって対応がかなり違った。
私も学校のことをほとんど知らずに私立高校を受けたことがある

私自身にも、学校のことをほとんど知らないまま私立高校を受験した経験がある。
中学3年生のとき、担任の先生から「滑り止めとして私立も一校は受けておいた方がいい」と言われ、首都圏のある私立高校を受験した。
そう言えば当時公立含めて高校を自分から主体的に比較して選んだ記憶はほぼない。
先生が出した候補の中から公立も私立も適当に1つ選んだだけだった。
当時の私の高校受験における主体性は、分かりづらく例えるならケンタッキーにおけるウィングの可食部分くらいしかなかった。
今考えると数か月の付き合いしか無い人間に自分の青春時代の数年間を委ねたのだから、思い返してみれば相当愚かだったのだが、諸事情により選択肢は多く無かった為、仕方がない部分もある。
私立高校の受験当日、学校へ行ってまず感じたのは
「ヤンキーか不登校児みたいなのしかいない」
もちろんこれは当時の私がその場で受けた個人的な印象。
ただし試験も「これ、中1の範囲しか出してないんじゃない?」と思うくらい簡単だったので、その印象は余り遠く無い気はする。
面接もあったような気がするが、正直そこはかなり曖昧だ。
ただ、「絶対行きたくない、こんなとこ」と思ったことだけはしっかり覚えている。
幸い第一志望だった公立高校に受かったので、その私立高校へ通うことはなかった。
まず公立高校の校則を調べてみた

まず調べたのは、東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県の公立高校。
こちらは想像していたよりずっと見つけやすかった。
たとえば埼玉県教育委員会には、各県立高校の校則掲載ページをまとめた「生徒指導等に関する校則一覧」がある。
千葉県にも同様に、県立高校・県立中学校の「校則(生徒指導規程)一覧」が用意されている。
東京都立高校でも、学校ごとに生徒心得を公開している例があり、神奈川県立高校でも生徒手帳を公開している学校が見つかる。
少なくとも今回調べた首都圏の公立高校については、受験前に校則を確認するための環境はかなり整っていた。
校則を守ることを求める一方でその内容も事前に分かりやすく見せる。
これならば「その校則が嫌なら別の学校を選ぶ」という判断もできるし、そう言われても仕方ない。
次は私立高校。実際に12校へ問い合わせた

次に私立高校を調べた。
もちろん私立高校でも、校則や生徒心得を公式サイトで公開している学校はある。
ただし公立高校とは違い、校則をHPに掲載していない学校もかなり多かった。
そこで今回公式サイトを見ても具体的な校則が見つからなかった学校には問い合わせを送ってみる事にした。
基準はこんな感じ。
問い合わせた内容は単純だ。
学校選びの参考として校則を確認したい。公式ホームページでは具体的な内容が見つからなかったが、受験・入学前に校則や学校生活上の決まりを確認することは可能か。閲覧できるページや資料があれば教えてほしい。
12校のうち、直接メールを送れた学校が4校、問い合わせフォームを使った学校が8校だった。
ここでちょっと面白かったのが、その問い合わせフォーム。
8校中6校で住所と電話番号の入力が必須だった。
さらに、そのうち2校では現在通っている中学校名まで必須。

いや、校則について聞きたいだけなんだが。お前どんだけ個人情報求めるんだよ。
資料請求や入試相談と同じ問い合わせフォームを使っている学校が多いのだと思うが、単純に校則を一つ確認したいだけの中学生が使う入口として考えると、なかなかの重装備である。
「その校則が嫌なら別の高校に行けばよかったじゃん」と言うのは簡単だが、私立の場合はその判断材料を得るための問い合わせが、必ずしも気軽にできるとは限らないようだ。
12校の回答を並べると、かなり違った


問い合わせから数日待った結果、12校中8校から具体的な回答があった。
残りは、自動返信だけだった学校が3校、具体的な返事がなかった学校が1校。
学校名はこの記事では伏せる。
| 学校 | 偏差値帯 | 回答内容 |
|---|---|---|
| 都内私立A校 | 69 | 実際に入学した生徒向けの生徒心得PDFを添付してくれた |
| 都内私立B校 | 51~58 | 生徒手帳の資料を添付し、現在変更されている部分まで説明してくれた |
| 都内私立C校 | 43 | HPでは非公開だが、個別相談のほかメールや電話でも具体的な質問に対応可能 |
| 都内私立D校 | 63~67 | 現状ではHPで非公開だが、誰でも閲覧できる形での公開を検討中。現時点では電話や学校説明会で説明 |
| 都内私立E校 | 39~58 | 内容が多岐にわたるためメールでの説明は難しく、学校説明会の個別相談で確認してほしいとの回答 |
| 都内私立F校 | 49~58 | HP掲載なし、配布資料もなし。電話または学校説明会の個別相談で確認 |
| 都内私立G校 | 42~50 | HPには掲載なし、詳細は学校見学説明会の個別相談で説明するとの回答。「一般的な校則」で独自の決まりはないと思うとメールの文章にて補足があった。 |
| 都内私立H校 | 53 | 校則は非公開。校則については染髪・ピアスについてや、携帯電話の学校での使用方法についてメールの文言内で一部説明があっり、それ以外の詳細は説明会の個別相談で確認との事だった。 |
| 都内私立I校 | 62 | 回答なし |
| 都内私立J校 | 43 | 回答なし |
| 都内私立K校 | 39 | 回答なし |
| 都内私立L校 | 39~42 | 回答なし |
実際の生徒心得まで送ってくれた学校もあった
A校は、「一般には生徒心得を公開していない」としたうえで、実際に入学した生徒へ渡している生徒心得のPDFを送ってくれた。
そこには服装、髪型、化粧、アクセサリー、アルバイト、SNS、通学時のルールなど、学校生活に関わる具体的な決まりがまとまっていた。
これなら受験前でも「自分に合うか」をかなり具体的に判断できる。
B校も少し古い生徒手帳の資料を添付したうえで、現在は変更されている箇所まで説明してくれた。
「今ある校則を見せる」だけでなく、「ここは現在変わっています」まで説明してくれたのは分かりやすかった。
個人的には一番感じが良いと感じた。
メールや電話で具体的に聞ける学校もあった
C校は、ホームページには校則を掲載していないものの、オープンスクールなどの個別相談で確認できるほか、気になる校則があればメールや電話でも問い合わせてよいという回答だった。
全文をその場で見せてもらえるわけではないが、「説明会へ来てください」だけではなく、遠方だったり日程が合わなかったりする人にも確認手段が残されている。
「今は見られないが、公開を検討している」という学校も
D校からは少し遅れて返事が届いた。
現在はホームページなどで校則を見ることはできない。
ただし、今後は誰でも閲覧できるようにすることを検討しているとのことだった。
現時点では電話で質問するか、学校説明会で現場の教員から説明してもらう形になる。
校則そのものが送られてきたわけではないが、「現在は見られません」で終わらず、公開されていない不便さを認識したうえで改善を検討していることまで書かれていたのは印象に残った。
一方で「詳しくは説明会へ」という回答も多い
E校は、校則の内容が多岐にわたるためメールでは説明が難しく、学校説明会の個別相談で確認してほしいという回答。
F校はさらに明確で、ホームページへの掲載もなく、配布できる資料もないため、電話か学校説明会で確認してほしいとのことだった。
もちろん聞けば教えてくれる。
ただ、比較のために複数校の校則を確認したい中学生からすると、一校ずつ電話したり説明会へ出向いたりするのはそれなりに大変だ。
PDFを一本置いてくれれば早い。
「一般的な校則です」は、けっこう難しい言葉だと思う
今回の回答の中で、私が引っかかった言葉の一つがこれだった。
本校の校則、生徒心得は一般的なものになりますので、本校独自の決まりはないように思います。
「一般的」って、どこからどこまでなんだろう。
たとえば宗教上の理由から輸血を受けないという考え方もある。
その信仰の中では当たり前でも、私たち全員にとって同じように当たり前とは限らない。
そういう「普通」のズレは、独自の文化や価値観を持つ私立学校という空間でも起こり得る。
だから、学校選びに関わる質問への回答として「一般的な校則です」という言葉だけでは、私はあまり判断材料にならないと感じた。
もう一校、引っかかる回答の学校があった。
H校はこちらから聞いたわけでは無いのだが、返信で染髪・ピアス・携帯電話についてだけ具体的に回答があった。
それはそれで情報としてはありがたい。
ただ、こちらが聞いているのは「高校生が校則と聞いて真っ先に思いつきそうなベスト3」ではなく、校則全体を確認する方法なのだ。
あくまで個人的な印象だけれど回答した教職員の「どうせ聞きたいのこんなとこでしょ?」的な思慮が見え隠れしたような気がした。
偏差値と問い合わせ対応は、別に関係なかった
問い合わせを始めた直後は、ちょっと面白い流れになっていた。
偏差値69の学校からは生徒心得PDFが届き、50台の学校からも資料付きの丁寧な回答。
「あれ、これまさか……適材適所なのだろうか」と思い始めた。
ところが偏差値43の学校からかなり丁寧な返事が来たと思えば、50台の学校でも「説明会へ」という回答があり、さらに偏差値63~67の学校からも遅れてきちんとした返事が届いた。
きれいに崩壊した。
少なくとも今回問い合わせた12校では、偏差値と問い合わせ対応の良し悪しに分かりやすい関係は見つからなかった。
まあ、世の中そんなに都合よく一本のグラフにはならない。
そして最後まで具体的な回答がなかった学校も4校あった。
同じ時期に問い合わせた学校の中には、生徒心得のPDFまで添付して回答してくれたところもある。それだけに、具体的な返事がなかった学校については、私はあまり良い印象を持てなかった。
校則は入学前に見られるのが一番公平だと思う
今回調べた範囲では、公立高校の方が校則をネット上で確認しやすかった。
県教育委員会が学校ごとの校則ページを一覧にしている地域まである。
一方、私立高校はかなりバラバラだった。
資料そのものを送ってくれる学校もあれば、メールや電話で答えてくれる学校、説明会へ行かなければ詳しい内容が分からない学校、返事がない学校もあった。
私立学校は学校案内そのものが生徒募集でもある。
学校案内の表紙に「スマホは校門前で電源を切ってください!」と大書きしても、あまり青春の香りはしない。
だから学校側から積極的に前へ出したい情報ではないのかもしれない、と私は今回調べながら感じた。
でも入学した瞬間から守ることを求めるルールなら、入学する前に読める方が公平だ。
公立高校に限って言えば、現状を見るとその論調は正しいかもしれない。
ただし「嫌なら出て行け」だけでは、何も良くならない


私はそもそも、「嫌ならやめろ」的な論調が好きではない。
会社に文句があるなら辞めればいい。
サービスが嫌なら使わなければいい。
学校が嫌なら別の学校へ行けばいい。
全部それで終わらせていたら、世の中の不便なものはずっと不便なままだ。
寒いから暖かくした。
遠いから移動手段を作った。
面倒だから機械にやらせた。
人間はずっと、「嫌だ」「不便だ」「どうにかならないか」の積み重ねで生活を変えてきた。
学校だって同じだと思う。
校則がおかしいと思ったなら、生徒会に入って変更を求めてもいい。学校へ意見を出してもいい。時代に合わなくなったルールなら見直せばいい。
実際、今回問い合わせた学校の中にも「社会の変化に合わせて校則を修正している」と説明してくれたところがあった。
「嫌なら別の高校へ行けばいい」で全部終わらせるより、その方がよほど前向きだ。
校則に文句を言うこと自体を悪いことのように扱う人とは、私はたぶん永遠に分かり合えない。
もしも世界に何かが起きて文明が崩壊したならば、その手の方々には文句を言わず、その後の生活を便利にする創意工夫なども一切行わず、ただ空に向かって大口を開け、黙って雨水を口にしながら生きていっていただきたい。
嫌なら出て行けばいい、現世から。


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