臭いおならと臭くないおならは何が違う?ニオイの正体と、おならを減らす方法

おならって、出た瞬間に「……あ、これは臭いやつかもしれない」と分かることがないだろうか。

特に気になるのが、音もなくスーッと抜けていくのに、妙に熱気だけは感じるおなら。豪快な「ブッ!」より、こういう静かな一発のほうが数秒後にとんでもないことになる気がする。

あの「肛門を熱気が通り抜けていく感じ」、なんとなく臭い予告編みたいに感じるんだよね。



では実際、臭いおならと臭くないおならは何が違うのか。便が肛門の近くまで来ていると臭くなるのか。そして、できることなら「臭くないおなら」にしたり、おならそのものを減らしたりする方法はあるのか。

調べてみると、おならの「量」と「臭さ」は、似ているようでかなり別の話だった。

目次

そもそも、おならは何でできている?

おならというと、腸の中で何かものすごく臭いガスが作られているイメージがある。しかし実際には、おならを構成するガスの大部分はそれほど臭くない。

主な成分は、窒素、酸素、二酸化炭素、水素、メタンなど。食事と一緒に飲み込んだ空気や、大腸の細菌が消化されずに届いた食べ物を発酵させたときに生じるガスが混ざっている。

米国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所(NIDDK)によると、消化管のガスは主に飲み込んだ空気と、大腸の細菌が未消化の炭水化物を分解するときに生じるガスからできている。詳しくはNIDDK「Symptoms & Causes of Gas in the Digestive Tract」で確認できる。

つまり「おならの量が多い=臭い成分も多い」とは限らない。

おならを臭くしているのは、ごくわずかな硫黄系ガス

では、あの強烈な臭いはどこから来るのか。

人間のおならを実際に採取して調べた研究では、悪臭と強く関係していたのが硫化水素、メタンチオール、ジメチルスルフィドといった硫黄を含むガスだった。

特に硫化水素の濃度と「臭さ」には強い関連が確認されている。研究は医学論文データベースPubMedで公開されている。

おならの大部分を占めるガスそのものはあまり臭わない。ほんのわずかに混じった硫黄系の成分が、あの「おなら臭」を作っている。

つまり、でっかい音を立てて大量に出たおならが意外と無臭なのに、音もなく少量だけ出たおならが猛烈に臭う、という現象は別に不思議ではない。

「量より質」という言葉を、おならで実感する日が来るとは。

「熱いおならほど臭い」気がするのは本当?

ここで気になるのが、冒頭の「臭いおならは妙に熱く感じる」という問題。

調べた限りでは、「臭いおならほど実際の温度が高い」という医学的な根拠は見当たらない。硫化水素が多いからガスが熱くなる、といった仕組みでもない。

そもそも腸内にあるガスは体内を通ってきたものなので、周囲の外気より温かい。勢いよく一瞬で抜けるおならより、少量のガスがゆっくり肛門周辺を通過したほうが、皮膚に触れている時間が長くなり「じわっと温かい」と感じやすい可能性はある。

ただし、これは「熱さと臭さの関係」が実証されたという意味ではない。

「熱い感じがしたから絶対に臭い」という法則はない。体感として結びついている可能性がある、くらいに考えるのがよさそうだ。

それでも経験上「音なし・熱気あり」のおならに警戒してしまう気持ちは、かなりよく分かる。

便が肛門の近くにあると、おならも臭くなる?

もうひとつ素朴に気になるのが、「肛門の近くまで便が来ていると、そこを通ったおならに便の臭いが付くのでは?」という疑問。

いかにもありそうな話だが、おならの臭いを決める主因として「直腸に便があるかどうか」だけを挙げることはできない。

おならの悪臭成分は、もっと上流の大腸内で細菌が食べ物などを分解する過程ですでに作られている。つまり「出口付近の便をかすめたから急に臭くなる」というより、腸内でどんなガスが作られていたかのほうが重要ということ。

一方、便そのものにもさまざまな揮発性の臭い成分が含まれているため、直腸に便がある状況と臭いおならが重なること自体はあり得る。ただ、「便が出口に近い=必ず臭いおなら」という単純な判定方法にはならない。

食べ物で「おならの量」と「臭さ」はどう変わる?

ここが少しややこしい。

おならを増やす食べ物と、臭い成分を増やしやすい食生活は完全には一致しないからだ。

豆や一部の野菜は「量」を増やしやすい

小腸で完全に消化・吸収されなかった炭水化物は大腸へ届き、そこで細菌のエサになる。その発酵過程で水素や二酸化炭素などが生まれ、おならの量が増える。

NIDDKでは、豆類、ブロッコリーやカリフラワーなど一部の野菜、乳製品、全粒穀物、一部の果物、糖アルコールなどを、体質によってガス症状を増やす食品として挙げている。詳しくはNIDDKの食事に関する解説を参照。

ただし、これらは健康的な食品も多い。「屁が出るから豆も野菜も食べない」という話ではなく、何を食べた日に自分のガスが増えるかを見るほうが現実的。

臭いにはタンパク質や硫黄の代謝も関係する

臭いの代表格である硫化水素は、腸内細菌が硫黄を含む物質を代謝することでも生じる。

だからといって「肉を食べれば必ず臭くなる」「野菜だけなら臭くならない」と言い切れるほど単純ではない。腸内細菌の構成も、人によってかなり違う。

同じ物を食べても、おならの量や臭い方にはかなり個人差がある。

では「臭くないおなら」にするには?

完全に無臭のおならだけを出す方法はない。しかし、妙に臭い日が続くなら生活を振り返る余地はある。

やってみること考え方
食事と臭いを記録する自分で臭いが強くなる食品を見つける
食生活を極端に偏らせない特定の食品だけを大量に食べ続けない
便秘を放置しない便秘はガス症状を悪化させる原因のひとつ
食物繊維は急激に増やさない一気に増やすと逆にガスが増える人もいる

一番分かりやすいのは、数日から1週間ほど「何を食べたか」「その日のガスの量・臭い」を簡単に記録してみること。

NIDDKでも、ガス症状が気になる場合には食事と症状の日記から原因になりそうな食品を探す方法を紹介している。

ネットで「おならには○○が悪い」と見つけて片っ端から食品を禁止するより、自分の体で傾向を見るほうがずっと現実的だ。

おならそのものを減らしたいなら「飲み込む空気」にも注目

臭いよりも「とにかく一日中おならが出る」という場合は、食べ物だけでなく空気をどれだけ飲み込んでいるかも重要になる。

NIDDKでは、ガスを減らす方法として次のような習慣を挙げている。

  • 食事を急いでかき込まない
  • 炭酸飲料を減らす
  • ガムや飴を頻繁に口にしない
  • ストローで飲む習慣を減らす
  • 食べながら必要以上にしゃべらない

詳しくはNIDDK「Treatment for Gas in the Digestive Tract」にまとめられている。

特に炭酸飲料は分かりやすい。「腸内環境が悪くてガスを大量生産している」と思っていたら、単純に飲み込んでいるガスが多かった、という可能性もある。

おならには「口から入ってきた空気」と「腸内細菌が作ったガス」の両方がある。おならを減らしたいなら、この2ルートを分けて考えると分かりやすい。

「おならが出にくい腸内環境」を作ることはできる?

ここまで来ると、「善玉菌を増やして腸内環境を完璧にすれば、おならそのものが出なくなるのでは」と考えたくなる。

ところが、そもそもガスが作られること自体は正常な消化の一部。

NIDDKによれば、おならは平均すると1日8~14回ほどで、人によってはさらに多くても正常範囲に含まれる場合がある。

目標にするべきなのは「一切おならをしない腸」ではなく、「自分が困るほど大量に出ない状態」と考えたほうがいい。

そして「腸内環境を整える」という言葉もかなり広い。ヨーグルトや乳酸菌飲料を飲めば誰でも屁が減る、といった単純なものではなく、人によっては乳糖などが原因で逆にガスが増える場合もある。

結局のところ、まず試しやすいのは、食事を極端に偏らせない、便通を整える、食べる速度を落とす、炭酸などの余計なガスを減らす、そして自分がガスを出しやすい食品を把握すること。

「腸に良いとされる食品を大量投入する」より、自分の食事と症状の関係を知るほうが近道になりやすい。

音が大きい屁より「静かな屁」のほうが臭いの?

最後に、個人的にどうしても気になるこれ。

「ブオッ!」と景気よく出たおならより、「ス……」と出たおならのほうが臭い気がする。

しかし、おならの音量と悪臭の強さに直接的な関係があるという根拠もない。

音は、ガスが肛門を通る速度や肛門周辺の状態などによって変わる。一方、臭いはガスにどんな微量成分が含まれているかによって変わる。

つまり、理屈の上では「大音量なのにほぼ無臭」も「無音なのに激臭」も普通に成立する。

やっぱり静かなやつを信用できないという私の経験則は、科学的判定法にはならなかった。

急におならが増えたときは別の話

おならが出ること自体は普通だが、以前と比べて急激に増えたり、生活に支障が出るほど続いたりする場合は別。

特に腹痛、下痢、便秘、体重減少などを伴う場合は、単純に「腸内環境が悪い」で片づけず、医療機関へ相談したほうがいい。NIDDKでも、ガス症状が突然変化した場合や、こうした症状を伴う場合には医師への相談を勧めている。

乳糖不耐症、過敏性腸症候群(IBS)、便秘などでもガス症状が増えることがあるためだ。

まとめ:臭い屁と大量の屁は、別々に考えたほうがいい

調べてみると、おならについて一番分かりやすかったのは、「量」と「臭さ」を分けて考えることだった。

  • おならの主要なガスはほとんど臭わない
  • 悪臭には硫化水素などの硫黄系成分が大きく関係する
  • 大量のおならでも臭くないことはある
  • 「熱く感じる屁ほど臭い」という科学的な法則は確認されていない
  • 直腸に便があるだけで臭さが決まるわけではない
  • おならの量を減らすなら、発酵しやすい食品だけでなく飲み込む空気も見直す
  • おならゼロを目指す必要はない

普段なら出した瞬間に忘れてしまうおならだが、こうして調べてみると、あの一瞬のガスにも食事、腸内細菌、消化、飲み込んだ空気までいろいろ詰まっている。

ただし次に「熱い……これは来る」と感じても、それだけで臭いと断定することはできない。

数秒後、鼻で確かめるしかない。

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