2025年7月25日、沖縄本島北部に鳴り物入りでオープンした「ジャングリア沖縄」。
総事業費は700億円超。テレビ、Web、SNSでは開業前から大々的に取り上げられ、芸能人やインフルエンサーによる華やかな体験動画も大量に流れた。
沖縄のジャングルを特殊車両で駆け抜ける。恐竜と遭遇する。上空から雄大な森を見下ろす。
開業時だけを見れば、沖縄に新しい巨大観光名所が誕生した――そんな雰囲気だった。

私も最初は、なんだかんだ沖縄の新定番になるんだろうなと思ってた。
ところが、それからわずか1年。
運営会社は約89億円の最終赤字。親会社は約173億円の最終赤字。
年間来場者数も当初想定の150万人に届かず約100万人。さらに追加融資を求め、新たな出資企業やスポンサーを探す動きまで表面化している。
もちろん、この数字だけで「2028年に閉園する」と断定することはできない。
それでも、一度はジャングリアへ行ってみたいと思っている人が「まあ5年後でもあるでしょ」と考えていい状態なのかは、ちょっと気になる。
開業前の熱狂から現在の大赤字まで、この1年余りに何が起きたのかを順番に追ってみる。
そもそもジャングリア沖縄とは?
ジャングリア沖縄は、沖縄県北部の今帰仁村と名護市にまたがる大型テーマパーク。
2025年7月25日にグランドオープンした。
特徴は、ディズニーランドやUSJのように世界的な映画・キャラクターIPを主役にするのではなく、沖縄北部の自然そのものをエンターテインメント化したこと。
巨大恐竜が登場する「ダイナソー サファリ」をはじめ、バギー、吊り橋、上空を楽しむアトラクションなど、屋外型の体験が中心になっている。
隣接地には温浴施設「SPA JUNGLIA」も設けられた。
大自然を使うというコンセプト自体は、ほかの国内大手テーマパークとはかなり違う。
問題は、その期待値が開業前からかなり高く設定されてしまったことだった。
開業前からとにかく「ジャングリアだらけ」だった


ジャングリアの開業前後は、とにかく宣伝量が多かった。
テレビCM、情報番組、ニュース、Web広告、SNS。
さらに開業直後には多数のインフルエンサーが招待され、SNS上には楽しそうな投稿が一斉に並んだ。
東洋経済オンラインも、開園直後から多くのインフルエンサーが招待され、タイムラインに華やかでポジティブな投稿が並んだ状況を紹介している。
HIKAKIN氏や堀江貴文氏など、もともと大きな発信力を持つ人物による体験レビューも出た。
「ジャングリア」という名前を短期間で全国に浸透させるという意味では、相当強いマーケティングだった。
インフルエンサーを招待すること自体は珍しくない。
テーマパークでもホテルでも、新商品でも普通に行われるPR手法だ。
ただし、今回はこの華やかな開業前PRが、のちに別の問題を生むことになる。
宣伝で期待値を上げれば上げるほど、実際に一般客が訪れたときの体験がその期待を下回った場合、落差も大きくなる。
開園直後から「思っていたのと違う」の声が噴き出す
そして2025年7月25日。
通常料金を払った一般客が入り始めると、それまでの華やかな空気とは違う投稿も急激に増えていった。
特に目立ったのが、待ち時間と暑さ、そして広告とのギャップ。
- アトラクションの待ち時間が長い
- 日差しや雨を避けられる場所が少ない
- プレミアムパスの有無で体験差が大きい
- 人気アトラクションに乗れない
- 広告映像から想像していた規模感と違う
実際、開業して最初の月曜日には「ダイナソー サファリ」が300分待ち、「ファインディング ダイナソーズ」も240分待ちになったと報じられている。
東洋経済オンラインの開業1週間後の記事でも、この異常な待ち時間が取り上げられている。
さらに同メディアは、「広告が盛りすぎ」「プレミアムパスがないと楽しめない」といった批判が広がった状況についても現地取材している。
もちろん、「普通に楽しかった」「ダイナソー サファリは面白かった」という声もある。
ジャングリア全部が悪いという話ではない。
ただ、開業直後からこれだけ大きな不満が噴き出したのは、テーマパーク経営としてかなり痛かった。



宣伝が下手だったんじゃなくて、むしろ上手すぎたのかも。上げたハードルを現地が越えられなかった。
YouTuberが映した「普通の日のジャングリア」
そしてジャングリアにとって、昔のテーマパークにはなかった厄介な存在がYouTubeだった。
公式CMやプレス向け映像ではなく、一般客と同じように園内を歩き、そのままカメラを回す。
すると、人の密度、移動距離、アトラクション周辺の景色、待ち列、施設の質感まで丸ごと映ってしまう。
中でも大きく再生されたのが、いけちゃんの「流石に大滑りと噂のジャングリア沖縄に行ってみたら、ガチでした・・・」。
2025年12月24日に公開され、2026年9月時点で180万回以上再生されている。
タイトルはかなり刺激的だが、記事で重要なのはそこではない。
実際の園内を長時間映していること。
広告だけでは分からない「普通に客として行ったとき、どんな場所に見えるのか」がかなり分かりやすい。
ジャングリアの現状を考えるうえでは、公式PVだけでなく、一般客目線の長時間動画も一緒に見ると「広告とのギャップ」がつかみやすい。
一度酷評したYouTuberが再訪すると、改善された部分もあった
一方で、ジャングリア側もずっと同じ状態だったわけではない。
2026年3月、いけちゃんは再びジャングリアを訪問。
今度は「良いところを見つけるべく再訪問」という内容で、その後の変化も確認している。
開業直後の問題点について、運営側が改善を続けていたこと自体は事実。
特に待ち時間については大きく改善した。
運営会社によると、開業時には最大約300分だったダイナソー サファリの待ち時間が、開業時と同程度の入場者数だった年末年始には約60分前後まで短縮されたという。
つまり、「2025年7月のジャングリアを見て、そのまま現在も同じ」と考えるのも正しくない。
ただし、運営が改善することと、事業として利益が出ることはまた別の話。
あと、いけちゃんが炎上したのは完全に別の話(触れてはいけない)
半年で65万人。この時点では運営側も「計画通り」と説明していた
ここで時系列を2026年1月まで進める。
2025年7月25日から2026年1月24日までの半年間で、ジャングリアの来場者数は約65万人。
1日平均では約3500人だった。
このとき運営会社ジャパンエンターテイメントは、売上高そのものは公表しなかったものの、「当初の計画に沿った進捗をみせている」と説明している。
さらにグッズ販売やパーク内飲食は想定を上回っていたという。
つまり、半年の時点では少なくとも表向き、経営危機を強く感じさせる発表ではなかった。
「半年で既に赤字確定」と書くのは正確ではない。半年時点で公表されていたのは来場者数などで、運営側はむしろ計画に沿った進捗と説明していた。
だからこそ、このあと明らかになる数字との落差が大きい。
1年間では約100万人。想定150万人に届かなかった
2026年9月25日に開かれた親会社ジャパンエンターテイメントホールディングスの株主総会。
ここで開業後1年間の来場者数が約100万人だったことが明らかになった。
当初見込んでいたのは年間150万人。
初年度から約50万人、率にして約3分の1を下回った。
さらに気になるのが、半年時点の数字との比較。
前半約半年が65万人。
年間が約100万人。
単純に引けば、後半約半年で増えた人数は約35万人となる。
前半と後半では季節、天候、営業日数などの条件が異なるため、「客が半減した」と単純比較することはできない。ただ、開業特需を含む前半に比べて、その後の伸びが鈍ったことは数字からも見えてくる。
テーマパークで難しいのは2年目以降。
初年度は「新しいから一回行ってみたい」という客を呼べる。
翌年からは、一度来た客をもう一度呼ぶか、新しい客を継続的に獲得し続けなければならない。
そして初決算で約89億円の大赤字が判明


そして2026年9月25日。
開業後初となる本格的な決算の数字が明らかになった。
ジャングリアを直接運営する株式会社ジャパンエンターテイメントの2026年6月期最終損益は、
約89億円の赤字。
さらに親会社ジャパンエンターテイメントホールディングスは、子会社株式の評価損などを計上した結果、
約173億円の最終赤字。
沖縄テレビ・FNN「ジャングリア沖縄親会社が約173億円の赤字」
173億円は「ジャングリアを1年間営業して現金が173億円なくなった」という意味ではない。親会社が子会社株式の評価損などを計上した数字であり、パーク運営会社そのものの最終赤字は約89億円。
この区別は必要。
ただし、だから89億円なら軽いという話でもない。
しかも、来場者数が想定150万人を下回り約100万人にとどまったことが、赤字の主な要因として示されている。



173億円だけを見て騒ぐのは雑。でも運営会社89億円赤字でも十分すごい数字。
むしろ怖いのは「資金ショート」という言葉が出たこと
私が今回の報道で、赤字額以上に気になった部分がある。
開業からわずか1年で追加の資金調達が必要になっていること。
読売新聞の報道によると、運営会社は「資金ショートのリスクに対応するため」として金融機関へ追加融資を求めている。
政府系の沖縄振興開発金融公庫が、約30億円を融資する方向と報じられた。
さらに、大手企業やファンドなどから新規出資も募っている。
金融機関に示した改善策では、当初計画より少ない集客でも利益を出せる体質を目指しているという。
初年度赤字そのものより、「資金ショートのリスクへの対応」「追加融資」「新規出資募集」が開業1年で同時に出てきたことの方が、今後を見るうえでは重要。
大型テーマパークは開業初年度に大きな費用が出る。
そのため「初年度赤字=失敗」とは言えない。
一方、追加資金を入れ続けなければ事業を維持できない状態が長期化すれば、当然どこかで限界が来る。
刀が関わったほかのテーマパークはどうなった?
ジャングリアの事業計画を主導してきたのが、森岡毅氏率いる株式会社刀。
森岡氏というと「USJを復活させた人」という紹介をされることが多い。
ただし、USJ再建は森岡氏がUSJに在籍していた時代の仕事であり、2017年設立の株式会社刀がUSJを再建したわけではない。
その後の主なレジャー案件を簡単に並べるとこうなる。
| 施設 | 森岡氏・刀との関係 | 現状・結果 |
|---|---|---|
| USJ | 森岡氏がUSJ社員として再建期のマーケティングに関与 | 大きく成長。ただし株式会社刀設立以前の実績 |
| ネスタリゾート神戸 | 刀がマーケティング・経営に関与 | 刀は集客・売上増加などを成功実績として公表。その後、資本・経営から退出 |
| 西武園ゆうえんち | 約100億円規模のリニューアルで協業 | リニューアル直後は集客改善。長期的な投資回収・収益性については別記事で検証予定 |
| イマーシブ・フォート東京 | 刀が企画・開発・運営 | 2024年開業、2026年2月営業終了 |
| ジャングリア沖縄 | 刀が構想・事業化を主導 | 初年度来場者計画未達、運営会社約89億円赤字 |
今回はジャングリアが主題なので、各施設の収支までは掘り下げない。
ただ、少なくとも「森岡毅氏が関わっている=新しいテーマパーク事業も必ず成功する」ではないことは分かる。
特にイマーシブ・フォート東京は、2026年2月28日で営業終了。
刀自身も営業終了の発表で、需要が当初想定と異なり施設規模が過大だったことに加え、「財務面を含め当初計画との大きな乖離」が生じたと認めている。
西武園ゆうえんちは現在も営業しており、イマーシブ・フォート東京と同列に「失敗」と決めつけるものではない。
ただし、約100億円を投じた大規模リニューアルが長期的にどんな結果になったのかは、また別に検証する価値がありそう。
現在の西武園ゆうえんちの雰囲気を見ると…
西武園ゆうえんちについては、この動画を見ると現在の園内の雰囲気がかなり分かりやすい。
リニューアルによって昭和レトロという強いテーマが与えられた一方、パーク全体を完全に新設したわけではなく、既存施設を活用した部分も多い。
「再生に成功した」のか、「大規模投資による延命だった」のか。
ここは決算や投資回収まで追わないと判断できないので、刀そのものを扱う別記事で掘り下げたい。
今回重要なのは、ジャングリアもまた「刀だから絶対安心」とは言えないという点だけ。
ではジャングリアは本当に「あと3年」持たないのか?
ここからは少し慎重に考えたい。
運営会社が約89億円赤字だったから、
89億円×3年=267億円。
だから3年で潰れる。
そんな計算はできない。
初年度だけ発生する費用は今後減る可能性がある。
運営効率も改善できるし、客数や客単価が上がれば収支も変わる。
反対に、設備の維持費、人件費、光熱費、広告費、借入金の利息などは続く。
さらに集客のため新しいアトラクションを追加するなら、新規投資も必要になる。
現時点の公開情報だけから、「2028年に倒産する」「あと○年で閉園する」と正確な寿命を計算することはできない。
ただし、今回の数字からかなり重要な期間は見えてくる。
2027年から2028年にかけて、黒字化への道筋を見せられるか。
ここが一つの勝負どころになりそう。
なぜなら、すでに開業1年で追加融資と新規出資募集へ動いているからだ。
追加資金によって時間を買うことはできる。
でも、その時間の中で本業の収支が改善しなければ、いずれまた次の資金が必要になる。
ジャングリアが生き残るために必要なこと
だからといって、ジャングリアがもう詰んでいるわけでもない。
改善の余地はまだある。
- アトラクションの回転率をさらに改善する
- 雨や猛暑でも楽しめる屋内・全天候型コンテンツを増やす
- 少ない来場者でも利益が出る運営体質へ変える
- 新しいアトラクションでリピーターを生み出す
- 沖縄旅行の定番コースとして定着させる
- 国内客だけでなく海外観光客も継続的に取り込む
待ち時間のように、すでに改善が確認できるものもある。
客の不満を拾って運営を修正する力は、少なくとも開業直後より上がっている。
あとは、その改善が客数と収益に結びつくか。
これは次の決算でかなり見えてくるはず。
一度は行きたいなら2028年までに行くべし?
ジャングリアへ一度くらい行ってみたい。
でも沖縄は遠いし、5年後でも10年後でもいい。
そう考えている人もいると思う。
私なら、そこまで先延ばしにはしない。
「今のジャングリア」を一度体験しておきたいなら、2027~2028年頃までを一つの目安にする。
これは「2029年には閉園している」という予言ではない。
新たな出資がまとまり、客数も改善し、数年後には現在より大きなテーマパークへ成長している可能性もある。
反対に経営改善が進まなければ、閉園まで行かなくても、営業時間、料金、アトラクション、運営会社などが大きく変わる可能性はある。
700億円かけたから簡単にはやめられない。
でも、700億円かけたから潰れないとは限らない。
開業半年の時点では「当初計画に沿った進捗」と説明されていた。
それから約8か月後には、89億円の最終赤字と追加資金調達が表面化した。
まだ開業から1年余り。
それなのに、状況はすでにこれだけ大きく動いている。
2027年、そして2028年。
ジャングリアが沖縄を代表する観光地へ育つのか。
それとも、現在とはかなり違う姿になっているのか。
答えが見えてくるのは、案外そんなに先ではなさそうだ。


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