「新小岩駅って、小岩駅の新しい方なんだからすぐ近くにあるんじゃないの?」
地図をあまり見ずに名前だけ聞いたら、そんな印象を持っても不思議ではありません。
ところが実際の小岩駅と新小岩駅は、JR総武線で1駅。営業キロでは2.8km離れています。
そこで気になりました。

東京にある「○○駅」と「新○○駅」、一番離れてるのってどこなんだろ。
東京都内の駅を調べてみると、「新」を取った名前の駅が都内に現存する組み合わせは、意外にもかなりあります。
しかも調べていくと、「新○○駅=○○駅のすぐ近くに後から造られた駅」とは限らないことも分かってきました。
東京にある「○○駅」と「新○○駅」を全部拾ってみた


今回の対象は、東京都内に現在存在する駅のうち、次の条件に当てはまるもの。
| ○○駅 | 新○○駅 | 路線の組み合わせ |
|---|---|---|
| 秋津 | 新秋津 | 西武池袋線/JR武蔵野線 |
| 板橋 | 新板橋 | JR埼京線/都営三田線 |
| 江古田 | 新江古田 | 西武池袋線/都営大江戸線 |
| 大久保 | 新大久保 | JR中央・総武線/JR山手線 |
| 大塚 | 新大塚 | JR山手線/東京メトロ丸ノ内線 |
| 御徒町 | 新御徒町 | JR/都営大江戸線・つくばエクスプレス |
| 御茶ノ水 | 新御茶ノ水 | JR・丸ノ内線/千代田線 |
| 木場 | 新木場 | 東西線/JR・有楽町線・りんかい線 |
| 小岩 | 新小岩 | JR総武線 |
| 高円寺 | 新高円寺 | JR中央線/丸ノ内線 |
| 庚申塚 | 新庚申塚 | 東京さくらトラム(都電荒川線) |
| 小平 | 新小平 | 西武線/JR武蔵野線 |
| 桜台 | 新桜台 | 西武池袋線/西武有楽町線 |
| 柴又 | 新柴又 | 京成金町線/北総線 |
| 整備場 | 新整備場 | 東京モノレール |
| 高島平 | 新高島平 | 都営三田線 |
| 豊洲 | 新豊洲 | 有楽町線・ゆりかもめ/ゆりかもめ |
| 中野 | 新中野 | JR・東西線/丸ノ内線 |
| 日本橋 | 新日本橋 | 地下鉄/JR総武快速線 |
| 三河島 | 新三河島 | JR常磐線/京成本線 |
数えてみると全部で20組。
同じ会社・同じ路線上にあるものもあれば、鉄道会社まで違うもの、地下鉄とJRの組み合わせ、さらにはモノレールまで混ざっています。
そもそも「新○○駅」の“新”って何?


まず大前提として、「新○○」の「新」に全国共通の厳密なルールがあるわけではありません。
よく知られている新大阪、新横浜、新神戸などは、新幹線を既存の中心駅へ乗り入れさせるのが難しかったため、別の場所に新しい駅が設けられた代表例。
しかし東京の20組を見てみると事情はもっとバラバラです。
「新」は、既存駅の近くにできた新駅だけでなく、新しい路線、新しい街、新しく開発された地域、既存の地名との区別など、さまざまな理由で付けられています。
つまり駅名だけ見て「新○○なら○○駅のすぐ隣だろう」と思い込むと、普通に裏切られます。
一番遠かったのは「整備場駅」と「新整備場駅」


今回、駅の位置を同じ条件で比較するため、駅の代表地点の緯度・経度から直線距離を計算しました。
その結果、一番遠かったのが羽田空港周辺にある「整備場駅」と「新整備場駅」で、直線距離は約3.35km。
しかもこの2駅、同じ東京モノレールの駅です。
整備場駅から新整備場駅まで乗ると、途中に天空橋駅と羽田空港第3ターミナル駅が入り、営業キロは4.4km。電車なら約6分ですが、「○○/新○○」という名前だけから想像する距離ではありません。
整備場駅は羽田空港の西側、新整備場駅は空港島のさらに東側。羽田空港の拡張とともに整備地区そのものが広がっていったため、似た名前でもかなり離れた場所になっています。
ちなみに「新整備場」は1993年、羽田空港の新ターミナル開業に合わせて延伸された区間に設けられた駅。



「新しい整備場」だから新整備場。名前だけはものすごく正直。
2位は木場と新木場、3位は小岩と新小岩
整備場・新整備場に続いて離れていたのが、江東区の木場駅と新木場駅。
直線距離は約3.17km。徒歩ルートでは5kmを超えるため、名前の印象以上に別の場所です。
「木場」はその名の通り、江戸時代から材木を置く場所だった地域。ところが木場の材木業者は昭和期に埋立地へ移転し、その新しい木材関連地区が「新木場」と呼ばれるようになりました。
つまり新木場の「新」は、単に木場駅の近くへ新しい駅を造ったからではなく、「新しい木場」という地域名に由来します。
続くのが小岩駅と新小岩駅で、直線距離は約2.84km。JR総武線では本当に隣の駅ですが、徒歩ならかなりの距離。
「隣駅なんだから近いだろう」と思うと、この組み合わせも意外に遠く感じます。
新小岩は「地名より駅名のほうが先」という逆転現象


新小岩にはさらに面白い話があります。
今では普通に「新小岩」という地名がありますが、新小岩という地名より新小岩駅のほうが古いのです。
葛飾区史によると、新小岩駅が開業したのは1928年(昭和3年)。一方で「新小岩」が正式な地名になったのは1965年(昭和40年)です。
つまり、
小岩という駅がある → 新しい駅を「新小岩」と命名 → その駅名が定着 → 後から周辺の正式な地名まで「新小岩」になった。
という順番。
しかも新小岩駅周辺は当時「小松」と呼ばれており、駅名候補として「下総小松」も考えられていました。
葛飾区の資料には、地元から「小松」や「下総小松」への変更を求める動きがあったものの、すでに切符や駅名表示板が完成しており、変更費用の問題もあって新小岩のままになったという話まで残っています。
もし当時駅名が変更されていたら、現在の「新小岩」という街そのものが存在していなかった可能性すらあります。
逆に一番近いのは「庚申塚」と「新庚申塚」


一方、一番近かったのが東京さくらトラムの庚申塚停留場と新庚申塚停留場。
駅の代表地点同士の直線距離は約217m。
もちろん同じ路線の隣駅。電車に乗らず歩いても数分程度の距離です。
一番遠い整備場・新整備場が約3.35kmなので、その差は15倍以上。
同じ「○○駅/新○○駅」でも、距離感にはこれだけ差があります。
名前をよく見ると変な「新○○駅」はまだある
距離以外にも、20組を眺めていると妙なところがいくつも出てきます。
江古田と新江古田は、同じ漢字なのに読み方が違う
西武池袋線の江古田駅は「えこだ」。
ところが都営大江戸線の新江古田駅は「しんえごた」です。
東京都交通局の駅案内にも、はっきり「しんえごた」と記載されています。
しかも両駅は歩ける距離。
「えこだ駅から、しんえごた駅へ行く」という、知らない人には少し納得しづらい組み合わせです。
新豊洲は「豊洲駅の新しい方」という意味ではない
豊洲駅と新豊洲駅は、ゆりかもめで隣同士。
いかにも「豊洲駅があったので、その隣に新しくできた駅を新豊洲にした」ように見えます。
しかしゆりかもめ公式の新豊洲駅プロフィールには、区画整理事業や民間開発によって「新しい街が生み出されること」から新豊洲と名付けられたと説明されています。
つまり、ここでの「新」は駅というより街の「新」。



同じ「新」でも理由が全然違うのね。
秋津と新秋津は、乗り換えなのに一度商店街へ出る
西武池袋線の秋津駅とJR武蔵野線の新秋津駅も面白い組み合わせ。
直線距離は300mにも満たないほど近いのですが、両駅は一体化しておらず、乗り換えるには改札を出て駅前の道を歩きます。
徒歩ルートではおよそ500m。途中には商店が並び、駅と駅を乗り換える人の流れそのものが街の風景になっています。
地下通路で直結した巨大ターミナルに慣れていると、乗り換えのために普通の商店街を歩く光景はなかなか新鮮。
新桜台は一時期「終点」だった
西武有楽町線の新桜台駅は1983年に開業しました。
現在は練馬方面と小竹向原方面をつなぐ途中駅ですが、開業当初は新桜台―小竹向原間だけが先に開通。
練馬までつながったのは1994年です。
つまり11年ほどの間、新桜台は「西武有楽町線の端っこ」でした。
西武鉄道も西武有楽町線40周年の記事で、この開業経緯を紹介しています。
「新」が付いていても今回の対象外になる駅も多い
東京都内には、今回の20組以外にも「新」が付く駅がたくさんあります。
たとえば新小金井、新代田、新馬場など。
ただし東京都内には現在、それぞれに対応する「小金井駅」「代田駅」「馬場駅」が存在しないため今回は除外しました。
もちろん新宿や新橋も対象外。
「新宿」は「宿の新駅」、「新橋」は「橋駅の新駅」という意味ではありません。
駅名の頭に「新」が付いているだけでは、「○○駅」と対になる駅とは限りません。今回は「新」を取った駅名が東京都内に実在するものだけを比較しています。
名前は似ていても、駅ができた理由はバラバラだった


最初は「新小岩って小岩の近くじゃないの?」という単純な疑問でした。
ところが東京都内だけを見ても、20組。
一番遠い整備場―新整備場は直線で約3.35km。一方、庚申塚―新庚申塚は約217m。
さらに調べると、新小岩のように駅名が後から街の名前になった場所もあれば、新豊洲のように新しく生まれる街そのものを指した「新」もあります。
「新」というたった一文字なのに、その理由は駅によってまるで違う。
普段何気なく見ている駅名も、地図と歴史を少し掘ってみるだけで、意外と話が詰まっています。


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