街の唐揚げ専門店にも、スーパーの惣菜売り場にも、「金賞受賞」の文字。しかも、どこへ行っても違う店が金賞を取っているように見える。
金賞って、そんなに何十軒も出るものだったっけ? そもそも、日本一おいしい唐揚げは何軒あるの?
気になって日本唐揚協会の発表を調べてみたら、受賞店の数だけではなく、部門の分け方、審査方法、受賞歴の使い方、そして賞をめぐるビジネスまで見えてきた。

金賞の唐揚げを買って、その帰りにまた別の金賞を見かける。もう金賞の渋滞なのよ。
金賞だらけは気のせいじゃない。2026年は61店が受賞


まず、日本で知られる唐揚げの賞の一つが、一般社団法人日本唐揚協会による「からあげグランプリ®」。2010年から開催されている大会で、唐揚げ専門店だけでなく、弁当やスーパーの惣菜も審査対象になる。
その受賞数を、協会が公表した2025年・2026年の大会結果から拾ってみた。
| 大会・部門 | 応募数 | 最高金賞・金賞 | 応募数に対する割合 |
|---|---|---|---|
| 2025年・一般店舗 | 571店 | 60店 | 約10.5% |
| 2026年・一般店舗 | 397店 | 61店 | 約15.4% |
| 2026年・弁当 | 18店 | 7店 | 約38.9% |
| 2026年・スーパー惣菜 | 103社 | 46社 | 約44.7% |
※数字は2025年の協会発表と2026年の協会発表に基づく。割合は応募数から計算したもの。一般店舗と弁当は「店」、スーパーは「社」なので、横並びの当選確率比較ではない。
専門店の一般部門に限っても、2026年は約6~7店に1店が金賞以上。弁当やスーパーの部門では、応募数に対する受賞者の割合がさらに大きい。もちろん応募する時点で自信のある店・商品が集まっているため、全国の唐揚げ屋の15%が金賞という意味ではない。
それでも、年間で何十もの「金賞受賞店」が生まれる構造であることは、公式数字からはっきり分かる。しかも大会は毎年ある。見かける金賞の数が積み重なるのも無理はない。
※画像はイメージです。実在する店舗の売り場ではありません。
そもそも「金賞」は1位じゃない
ここが、いちばん誤解しやすいところ。からあげグランプリでは、長年「最高金賞」と「金賞」が設けられ、さらにしょうゆダレ、塩ダレ、味バラエティなど、味や地域で部門が細分化されてきた。
2025年の大会では、東日本・中日本・西日本のしょうゆダレ部門などがあり、部門ごとに最高金賞が1店、金賞は複数店という仕組み。つまり「全国総合1位」を意味する金賞ではない。
2025年5月にはTBS系の番組でこの問題が取り上げられ、加藤浩次さんが「最高金賞以外を銀賞にしたほうが分かりやすいのでは」と日本唐揚協会の専務理事に提案した。専務理事は、銀賞という区分がないと説明している。
日刊スポーツの番組報道
「金賞受賞」は、必ずしも「その大会の日本一」「その部門の1位」を意味しない。主催団体・開催年・部門・最高金賞か金賞かまで見て、初めて実績の中身が分かる。
ただし、部門が細かいこと自体が悪いわけではない。塩味としょうゆ味では評価も違うし、地域によって好みも異なる。「いろいろなおいしい店を発掘する」という賞の狙いには筋が通っている。問題は、その細かい条件が宣伝では見えにくくなりがちなことだと思う。
昔は味見をせずに金賞? 審査方法も変わっていた
もう一つ意外だったのが、審査方法の変化。2022年の日本唐揚協会の公式Q&Aには、当時のグランプリについて「予選、本選はネット投票」で、スーパー惣菜部門以外に試食審査会はないという説明がある。日本唐揚協会の2022年Q&A
さらに協会は2021年、当時の投票システムについて、認定カラアゲニストにはボーナス票が加算されると説明していた。票が集まることと、おいしさを同じ条件で食べ比べた結果は、必ずしも一致しない。2021年の公式発表
その後、仕組みは変更されている。2025年の第16回では一般店舗の上位店による試食審査会が実施され、2026年の第17回では認定カラアゲニストによる来店評価の仕組みが本格導入された。そして2026年に募集が始まった第18回では、一般投票の上位店を専門審査員が実際に食べて評価する「最高金賞決定戦」を予定している。第18回の公式開催案内
つまり、何年の何賞かによって、審査の内容まで違うということ。「金賞」の二文字だけで、今も昔も同じ厳格な味の審査を受けたと思い込むのは早い。
金賞が街に増える理由は「受賞店の増殖」と「時間の蓄積」
受賞したのは1店でも、支店が増えれば看板は何枚にもなる
実はこの疑問、以前から業界でも話題になっていた。2021年の『週刊女性PRIME』の取材で、日本唐揚協会の八木宏一郎専務理事は、街で金賞を多く見かける理由の一つとして、受賞企業が支店を増やしていることを挙げた。2021年の取材記事
確かに、金賞を獲得したブランドがその後に店舗を増やせば、新しい店舗にも「金賞受賞」のイメージが広がる。新たな審査で毎回別の支店が勝ったわけでなくても、街で見る受賞の看板は増えるわけだ。もっとも、受賞歴の具体的な使用ルールは大会・部門・表示方法によって異なる。
10年以上前の受賞歴が、今も宣伝の顔になることがある
2025年のテレビ番組では、協会専務理事が、十数年前に金賞を獲った店が今も受賞歴を掲げ、現在の味について苦情が届くことがあると話している。これには私もちょっと考えさせられた。日刊スポーツの報道
十年前に金賞を獲ったという事実は、十年後も事実。でも、その十年間に材料や作り方、調理する人、店の運営が変わっていれば、現在の味まで保証することにはならない。
受賞歴は履歴書として価値がある。ただし、それが現在の実力を示す保証書とは限らない、という話。
参加費は2万2,000円。さらに受賞盾も別売りだった


では「金賞はお金で買える」という噂は本当なのか。ここは分けて考えたい。
日本唐揚協会による第18回大会の募集発表では、2026年のエントリー費用を税込22,000円と明記している。ただし、これは大会への応募費用であり、支払えば金賞になるという意味ではない。書類選考もあり、金賞は審査で決まる仕組みだ。
一方、運営側が受賞実績を販促に使う仕組みまで用意しているのも事実。第17回のスーパー総菜部門に限った募集要項には、賞状は贈呈される一方、追加の賞状や受賞盾は別途有料、受賞企業はシンボルロゴ等を一定期間無償で使えると記されている。第17回スーパー総菜部門の公式募集要項
さらに同要項では、過去に受賞した商品について、受賞年・部門などを明記し、商品がリニューアルされていないこと等を条件に、翌年もエントリーすれば過去の受賞実績に関連する商標・ロゴを引き続き使用できる仕組みが示されている。これはスーパー総菜部門の条件で、すべての店舗部門に共通するとは限らない。
応募費用があること、賞状や盾に有料の追加サービスがあることは、賞の売買や審査の不正を証明しない。ただし、受賞実績が販促資産として位置づけられていることは、主催者の公開資料から確認できる。
賞を取る側にとっても、宣伝費の一つとして出場を考えるのは自然なこと。店の看板、店頭POP、商品パッケージ、ニュースリリースで「金賞」の言葉を使えるなら、その見返りは決して小さくない。
さらに踏み込むと…「金賞を獲る方法」の有料動画も報じられていた
受賞をめぐる商売の話は、参加費だけでは終わらない。
2021年11月の『週刊女性PRIME』は、日本唐揚協会側が「最高金賞・金賞を獲る方法」と題する27,000円の動画商品を販売していたと報道した。記事によると、動画では受賞店のブランドや味を利用するフランチャイズの仕組みも紹介されていた。週刊女性PRIMEの2021年記事
ここで気になるのは、「おいしい唐揚げを選ぶ立場」と「受賞ブランドを事業として広める立場」が近いこと。賞がブランド価値を生み、そのブランド価値がビジネスにもなる。そんな循環が見える。
ただし、これは2021年当時の報道で、現在も動画販売や同じ事業が続いていると示すものではない。また、協会側は取材への回答で「賞を間接的に売っているとは思っていない」と説明し、コロナ禍で苦しい飲食店を支え、受賞店の知名度を広げるためにフランチャイズの仕組みを応援していると主張していた。
このやり取りから断定できるのは、主催団体が受賞店のブランド活用を支援していたことと、その仕組みについて批判と反論があったことまで。審査結果を金銭で操作したという事実が確認されたわけではない。それでも、賞と事業の関係をどこまで明確にするべきかという問題は残る。
「金賞受賞」だけでは、消費者に必要な情報が足りない
金賞を取った店が実際においしいことは十分あり得る。長く研究を重ねた店も、地域に愛されている店もあるし、審査を通過した努力は軽く見られない。
ただ、宣伝のために「2026年・東日本しょうゆダレ部門・金賞」を「金賞受賞!」と大きく短縮すれば、見る人は「全国で1番おいしいのかな」と受け止めかねない。
消費者庁も、商品の優良性を強調する「No.1表示」などについて、客観的な根拠や表示内容との対応を重視している。ただし、唐揚げの金賞表示が直ちに法律違反になるという話ではなく、個々の表現と実態によって判断される。消費者庁「表示に関するQ&A」
私たちが受賞の文字を見るときは、①誰が主催した賞か、②何年の受賞か、③何部門の何賞か、④味を食べ比べた賞か人気投票か。この四つを知っておくだけでも、印象はずいぶん変わるはず。
逆に、受賞年や部門まできちんと書いた宣伝なら、根拠を隠さずアピールしていると受け止めやすい。金賞という肩書を、客が自分で確かめられる形にすることは、お店にとっても損ではないと思う。
結局、どこの唐揚げ屋も金賞なのはなぜ?
ここまで整理すると、金賞の多さには一つの秘密があるわけではなかった。部門ごとに複数の金賞を出すこと、毎年新しい受賞者が生まれること、受賞店やブランドが広がること、昔の受賞歴も宣伝に残ること。その組み合わせが、街の「金賞だらけ」を生み出している。
そして、賞はおいしい店を紹介する仕組みであると同時に、応募、ロゴ利用、広告、ブランド展開とも結びつく。唐揚げを応援する活動と、金賞の価値を利用する商売は、同じ場所に存在していた。
だから私は、金賞の看板を見ただけで「すごい!」とも「怪しい!」とも決めつけないようにしたい。大切なのは、何の賞をどんな審査で取ったのか。そこに、お店がどれだけ自信を持って説明できるかだろう。



でも次に唐揚げ屋へ行ったら、味より先に「何年の何部門?」って看板を読んじゃいそう。
金賞の価値がなくなったのではない。金賞という言葉だけでは、価値を判断しにくくなっている。これが、調べていちばん納得した答えだった。


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