タイミーの求人って、飲食店のホールや品出し、清掃などいろいろあるけれど、ここまで持ち物の存在感が強い募集はちょっと珍しいかもしれない。
2026年10月、Xで見かけたのは「ステーキのあさくま 安城店」が掲載した草刈りスタッフの求人。なんと応募条件に「草刈機お持ちの方限定」とある。
しかも時給は1,195円。これ、愛知県の最低賃金と同額なのだ。

草刈機を持ってきて、使って、片付けて、時給は最低賃金。さすがにちょっと気にならない?
Xで話題になった「草刈機持参」の求人とは?
きっかけはこちらのXの投稿。個人の草刈機を持参させる条件や、事故が起きた場合の安全管理責任について疑問を投げかけていた。
投稿に添付されているタイミーの求人画面を確認すると、募集内容は次のとおり。
| 募集店舗 | ステーキのあさくま 安城店 |
|---|---|
| 勤務日時 | 2026年10月21日(水)15:00~17:00 |
| 仕事内容 | 草刈機を使った除草、清掃、刈った草の集積・処理など |
| 応募条件 | 草刈機を持参でき、操作経験があること |
| 時給 | 1,195円 |
| 交通費 | 500円 |
| 報酬総額 | 2,890円(交通費込み) |
勤務は2時間、休憩なし。求人には「安全管理上、未経験の方は勤務出来ません」とあり、刈払機取扱作業者の資格を持っている人を歓迎する旨も書かれている。
草刈りの経験者を募集すること自体は何もおかしくない。ただ、草刈機まで本人が用意する仕事なのに、この金額なんだというのが、最初の引っかかりだった。
時給1,195円は愛知県の最低賃金とぴったり同じ
愛知県の公式情報によると、2026年10月1日からの地域別最低賃金は時給1,195円。今回の求人は、その金額と完全に一致している。
最低賃金で募集すること自体が違法という話ではない。そこは分けて考えたい。
ただし今回は、身一つで行けば働ける仕事ではない。刈払機は決して安い道具ではないし、燃料や刈刃などの消耗品も必要になる。使えば機械も傷むし、現場まで運ぶ手間だってある。
求人画面には時給と交通費が書かれているものの、機材の使用料や燃料代が別途支給されるかどうかは、確認できる範囲では分からなかった。
仮に全部自己負担なら、実際には最低賃金分の労働だけでなく、個人の機材まで提供していることになる。個人的には、この部分をどう考えているのか聞いてみたい。
もっと気になるのは、草刈機の安全管理


※画像はイメージです。実際の安城店の作業風景ではありません。
草刈機は、ただ草を刈るだけの道具と思っていたら危ない。回転する刃が石などに当たると、思いがけない方向に物が飛んだり、刃が跳ね返ったりすることがある。
厚生労働省の刈払機に関する安全資料では、作業前の刃や防護装置の確認に加え、フェイスガード、防振手袋、すね当てなどの使用や、公道に面する場所での飛散防止対策が案内されている。
今回の求人では「長袖長ズボン」で来るよう案内されているが、保護具の貸し出しや現場での立ち入り制限などについては、掲載画像からは分からない。
もちろん、求人に書いていないからといって対策をしていないとは限らない。実際の作業前に店舗側が確認する可能性だってある。
それでも、誰が持ち込んだ機械を点検して、誰が作業場所の安全を確認するのかは、気になるところ。
もしお客さんの車に石が飛んだら、誰の責任?
私がいちばん引っかかったのはここ。ステーキ店の駐車場や歩道に近い場所で草刈りをするなら、飛び石で車が傷ついたり、人にケガをさせたりする可能性も考えられる。
しかも今回使うのは、店が管理している機械ではなく働く人の私物。もし整備不良が事故につながったら、機械の所有者と店舗のどちらが責任を負うのだろうか。
ここで知っておきたいのは、タイミーで働く人が「タイミーから派遣される労働者」というわけではないこと。タイミーの公式説明によると、雇用契約は働く人と求人を出した事業者の間で結ばれる仕組みだ。
また、タイミーの労災案内では、1日だけの勤務でも就業先の労災保険の対象になると説明されている。
ただし、本人のケガに対する労災と、第三者への損害賠償は別の話。実際の事故では状況によって責任の判断が変わるため、「私物の機械だから全部本人の責任」とも「必ず会社が全額負担する」とも言い切れない。
だからこそ、事故が起きてからではなく、仕事を始める前にどういう取り決めがあるのか知りたい。
調べてみたら、あさくまには「ガーデニングキーパー」という制度もあった
もうひとつ気になって、あさくまの公式サイトを見ていたところ、意外なものを発見した。
それが「あさくまカンタレス ガーデニングキーパー」という制度。お店の庭木や雑草の手入れに、ガーデニングの技術を持った人の力を借りるという取り組みだ。
さらに、2018年の公式記事には、実際にガーデニングキーパーとして採用された人が、店舗の生け垣の剪定を行った事例も載っていた。
つまり、店の植栽管理を外部の人に手伝ってもらうという考え方は、あさくまにとって今回が初めてではなさそう。
ただし、今回のタイミー求人がこの制度の一環なのか、安城店が独自に募集したものなのかは分からない。少なくとも公開されている求人内容からは、その関係は読み取れなかった。
気になったので、あさくま本社に問い合わせてみた


※画像はイメージです。画面内の文章は実際の問い合わせ・返信内容とは異なります。
求人の画面だけを見て「あさくまが安全管理を怠っている」と決めつけるのは違うと思う。
実際には燃料代が支給されたり、店舗側で保護具を用意したりしているのかもしれない。
それなら直接聞いてみようと思い、あさくまの公式問い合わせフォームから質問を送った。飲食店の利用者として、Xでこの求人を見かけて疑問に思ったという内容だ。
質問したのは、主に次の5点。
- 本社の方針なのか、安城店独自の募集なのか
- なぜ草刈機を持参させるのか。燃料代や修理費用は誰が負担するのか
- 持参した草刈機の安全点検は誰が行うのか
- 飛び石などで客や車に被害が出た場合、誰が責任を負うのか
- 機械と操作経験を求めながら、時給を最低賃金と同額にした理由は何か
単なる求人表現の話ではなく、機材の費用負担や、実際に事故が起きた場合の責任について確認したかった。
返信は来た。でも、肝心の質問には答えてもらえなかった
問い合わせへの返信はあった。ただし、本社の担当者からではなく、あさくま安城店の店長からだった。
返ってきたメールの主要部分は以下のとおり。
お問い合わせ内容としまして、応募者が決まりましたら直接業務内容のお話を詳しく説明する流れとなっておりました。
今後はタイミーと連携し安全かつ分かりやすい内容で取り組む所存であります。
あさくま安城店からの返信メールより抜粋。間には求人内容の分かりづらさについての謝罪があった。
返信そのものは丁寧だったし、謝罪もあった。
それは分かる。
でも、私が聞きたかったのは「応募者に仕事の説明をするかどうか」ではない。持参した機械の点検や事故時の責任、費用負担、時給の設定についてだった。
ところが、この回答では質問した5点のいずれについても具体的な説明がなかった。「今後は安全かつ分かりやすく」というのも、何をどう見直すのかまでは分からない。



求人の文章が分かりにくいって話じゃなくて、事故が起きたらどうするのかを聞いたんだけどなあ。
もう一度質問したものの、10月22日時点で返事はなし
こちらの質問が伝わっていないように感じたので、お礼を伝えたうえで、改めて安全点検、費用負担、事故時の賠償責任、時給の設定理由などについて質問を送った。
店舗側で答えにくい内容なら、本社に確認してもらえないかともお願いした。
しかし、2026年10月29日まで待ったが、現時点で時点で再質問への回答は届いていない。
恐らくこの後も返事が来る事は無いだろう。
もちろん、まだ社内で確認している途中なのかもしれないし、この先返信がある可能性もある。ただ現状、最初の問い合わせに対しては抽象的な回答が1通あっただけで、知りたかった安全管理や責任の所在は結局分からないままという結果になった。
子どもの頃から知っている「あさくま」。でも今回感じたのは老舗感より古臭さだった
私が子どもの頃から、あさくまはあった。だから店の名前には昔から馴染みがある。
ただ、私の中では、昔からあるからといって特別な老舗感があるわけでもない。ファミレスの中でもAクラスというよりBクラスというか、どこか一昔前の雰囲気が残っているような印象だった。もちろん、これはあくまで私個人のイメージ。
そして今回の求人と問い合わせへの対応を見て、その印象が少し強くなってしまった。
個人の草刈機を持参させる条件を最低賃金で募集していること。それに疑問を持って本社の窓口に問い合わせたら、回答したのは店舗の店長。本社としての見解は示されず、安全管理や事故時の責任について尋ね直しても、今のところ返事はない。
本社が店舗に回答を任せること自体が問題というわけではない。でも、客や働く人の安全に関わる質問なのだから、店舗だけで答えられないなら本社として確認し、説明してくれてもいいのではないだろうか。
長く続いている会社なのに、現代のコンプライアンスや説明責任への感覚が、どこか昔のままなのではないか。そんな印象を受けてしまった。
もちろん、これだけで実際の安全対策が不十分だったとか、法律に違反していたと断定するつもりはない。確認したかったのはまさにその部分で、回答をもらえなかったから分からないのだ。
ただ、だからこそ今回の対応には、企業として少し杜撰さを感じた。老舗らしい安心感より、時代に取り残されているような古臭さの方が印象に残ったのは残念。
ただ、もしも今後あさくまから具体的な説明が届いた場合は、内容を確認したうえで追記したいと思う。


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